アウェー4連戦を1勝1分2敗で終えたレノファ山口FC。
5試合ぶりのホームゲームとなった第28節は、昇格圏内の2位につける徳島ヴォルティスと対戦しました。
両チームともに前節からスタメンを3人変更。山口は橋本健人が4試合ぶり、小松蓮が5試合ぶりの先発となりました。一方の徳島は4試合ぶりのスタメンとなった福岡将太をセンターバックに起用しました。
ミスマッチ
Football LABさんのデータの中に「チームスタイル指標」というものがあります(参考:https://www.football-lab.jp/pages/team_style/)。これは各チームがどのような戦い方をしているのかを様々なデータから数値化した指標であり、「左サイド攻撃」や「中央攻撃」、「ショートカウンター」など、J2の場合は8つの項目が存在します。この「チームスタイル指標」によると、徳島は「自陣ポゼッション」の指数がJ2で最も高い(10月18日時点)チームとなっています(参考:https://www.football-lab.jp/summary/team_style/j2/?year=2020&data=24)。「自陣ポゼッション」とは「自陣において20秒以上ボールを保持した攻撃」(引用:https://www.football-lab.jp/pages/team_style/)と定義されています。すなわち、徳島は自陣でしっかりボールを繋ぐことができるチームだと言えます。
そのデータ通り、この試合でも徳島はキーパーを含めて自陣でパスを繋ぎ、ボールを支配しました。立ち上がりからセンターバックとボランチの4人を中心にボールを動かし、山口のハイプレスを落ち着いてかわしていました。また、ショートパスで繋ぐことに固執するわけではなく、キーパーの上福元直人が敵陣にフィードを送るなど何度か長めのボールも使っていました。特に前半は、山口にとってミスマッチとなりやすい右サイドバックの田中陸を狙って蹴っていました。
田中陸は身長が170cm未満であり、最終ラインの4人の中で最も背が低い選手です。その田中陸に対し、徳島は187cmの垣田裕暉や183cmのジエゴが競ることで、ヘディング勝負となったときに勝ちやすい状況を作り出していました。そして競り合った田中陸の背後を渡井理己が狙い、2分にはボールが繋がって渡井がシュート。徳島は身長のミスマッチを突いてチャンスを作っていました。
奪った後の精度
後方からボールを繋ぐ徳島に対し、山口は高い位置からプレッシャーをかけにいっていました。ただ、徳島のビルドアップは非常に質が高く、連動した動きでパスを繋がれたり、トラップやターンで剥がされたりと、相手の良さを封じることはできませんでした。
しかし、回数は少ないながらも敵陣で奪ってチャンスを作りかける場面もありました。31分には高宇洋がパスをインターセプトすると、最後は橋本がシュート。ゴールとはならなかったものの、高い位置でボールを奪えたことでチャンスを迎えました。
35分、45分にも人数をかけた守備から敵陣ペナルティエリア近くでボールを奪います。しかし、どちらもシュートで終わることはできず。また、ボールをキープして攻撃し続ける訳でもなく、すぐさま徳島にボールを返す結果となってしまいました。そのため、プレーを完結させられず、かつ攻撃の時間は短くなってしまいました。
引き込まれて2失点
徳島に試合を支配されながら迎えた42分、山口は先制点を許してしまいました。
自陣低い位置でボールを繋いでいた徳島は、センターバックの福岡がハーフウェーライン付近の垣田に低く鋭い縦パスを供給します。垣田がワンタッチで渡井に落とすと、渡井は右サイドを走る西谷の前方へパス。西谷は早めにディフェンスラインとキーパーの間に低いクロスを入れます。戻りながらの対応となったヘニキが懸命に足を伸ばしてボールに触りましたが、これがループシュートのようになってしまいボールはゴールへ吸い込まれました。
山口はオウンゴールにより失点。ただ、ヘニキが触っていなければ垣田が決定機を迎えており、ヘニキのプレーは決して責められるものではありませんでした。
ペナルティエリア近くでゆっくりとボールを回していた徳島に対し、山口の選手たちは前に出ましたが制限はかけられず。福岡による長めの縦パスで一気に前進され、擬似カウンターを受けて失点を喫してしまいました。
また、前半アディショナルタイムにも同じような擬似カウンターから山口は2点目を決められてしまいました。
徳島は山口のハイプレスをかわすと、ドリブルで敵陣に持ち運んだ鈴木徳真が上がっていたジエゴにパスを送ります。ジエゴは左サイドからペナルティエリアに進入してクロス。これをゴール前の垣田が押し込んで、リードを2点に広げました。
この得点は完全に徳島の狙い通りだったと思います。ゴールの40秒程前、ハーフウェーライン付近でパスを受けた岩尾憲はフリーだったにもかかわらず、意図的に自陣方向へ下がっていきました。すでにアディショナルタイムに入っていたため、時間を使って前半を終わらせる狙いがあったのかもしれません。ただ、1点目のシーン同様、山口の選手を徳島陣内に引き込めれば、追加点のチャンスを作れるという思いも少なからずあったのではないかと推測します。結果的に、山口は人数をかけて高い位置でボールを奪いにいくことを選択。徳島はパスを繋いでプレスを掻い潜り、チャンスを決めきって前半終了間際に貴重な2点目を挙げました。
自陣ポゼッションとハイプレスの質
後半に入っても徳島ペースは変わりませんでした。山口を押し込んで何度もチャンスを創出。63分には西谷和希がゴールを決め、リードを3点に広げました。
山口は後半開始からイウリを投入し、追い上げる意思は見せましたがシュートチャンスはほとんど作れませんでした。徳島同様、後方からボールを繋いで攻めようとしていましたが、前へ運べず。相手のプレッシャーを恐れバックパスが多くなったり、焦りからコントロールミスやパスミスをしたりと、徳島と比べ明らかに質の低いビルドアップとなっていました。
また、徳島のハイプレスは山口より質が数段高いものでした。パスコースの切り方や前線の選手の2度追い、プレスをかわされた際の戻りの速さなど、山口が見習うべきプレーが多くあったように感じました。さらに、徳島はリードが3点に広がった後でもプレスの質を低下させず、チーム全体に守備への高い意識が感じられました。
終盤、山口はイウリや小松がシュートを放つなど徳島ゴールに迫りましたが、最後まで得点を取ることはできませんでした。攻守両面で質の違いを見せつけられた試合となり、0-3で敗戦。2連勝とはなりませんでした。
総括
徳島の特徴である「自陣ポゼッション」を封じることはできず、前半の内に2失点。後半にも追加点を決められ、0-3での完敗となってしまいました。
ホームでの連戦となる第29節、山口は水戸ホーリーホックと対戦します。
気持ちを切り替えて、なんとかホームで勝ち点3を掴んでほしいです。
コメント(2)
-
SPORTERIAスタッフ
2020/10/26 07:13
ハイプレス( vs 自陣ポゼッション)は諸刃の剣みたいなところがありますよね。
-
サンレノファン
2020/10/26 10:51
SPORTERIAスタッフさん、コメントありがとうございます!
奪えれば大チャンスを作ることができるが、突破されてしまえばピンチになってしまう、みたいな💦
そこのクオリティ勝負で今回は徳島に軍配でしょうか…さすが優勝争いをしているチームの完成度でした。
今年の山口はハイプレスが機能しない場面が多いんですよね...
そんな中での「自陣ポゼッション」No.1である徳島との対戦。完敗でしたね。