前節は試合開始早々に失点するなど、複数失点で敗れたレノファ山口FC

今季初勝利を目指す山口は第3節、ホームで開幕2連勝のアルビレックス新潟と対戦しました。


スタメン

フォーメーション図  フォーメーション図

山口は攻撃の中心だった佐藤謙介がメンバー外。佐藤謙介のポジションには池上丈二が入り、今季初スタメンの岸田和人と前節ゴールを決めた草野侑己が2トップを組みました。

一方の新潟は出場停止の本間至恩に代わり、星雄次がスタメンに起用されました。


スタッツ

基本スタッツ

前半は新潟がボールを保持する時間が圧倒的に多かったです。山口はマイボールにしても新潟の守備に苦しみ、思うように前進できず。13分には自陣ペナルティエリア近くでボールを失い、先制点を許してしまいました。38分には前からボールを奪いにいったところを掻い潜られ、2失点目。新潟は枠内シュート数2本で2点と、チャンスをしっかり決めての複数得点となりました。

後半は山口が立て直し、徐々に新潟のゴール近くまで前進できるようになりました。時折、良い崩しを見せるなどチャンスは作りましたが、シュート数はそこまで増加せず。後半アディショナルタイムに途中出場の浮田健誠が1点を返しましたが、1-2での敗戦となりました。

ゴール期待値

トータルのゴール期待値は両チームともに1未満と、お互いに決定的なチャンスは多くありませんでした。前半と後半で分けてみると、前半は山口が約0.05、新潟が約0.6、後半の上昇量は山口が0.4以上、新潟がおよそ0.2。ゴール期待値上は前半は新潟が主導権を握り、後半は山口がやや優勢という結果になっています。

山口としては前半はほとんど何もできず、守備に回る時間が多くなっていました。特に先制後は新潟が時間をかけて攻撃をしていたので、被シュート数は5本と少ないですが、決して新潟の攻撃を封じていた訳ではありませんでした。後半は1点こそ返したものの最終的なゴール期待値は0.5に届かず。前半からの修正は見られましたが、60分過ぎから30分近くシュートが無いなど、相手ゴールを脅かし続けることはできませんでした。


ビルドアップの差

ゴール期待値にも表れているように前半は新潟が試合を優位に進めていましたが、その理由はビルドアップの差だったと思います。

初期ポジションこそ違うものの山口・新潟ともに4-4-2のような形であり、ビルドアップ時にはセンターバックの2人が中心となってボールを動かしていました。パスネットワーク図を見ても、センターバック間の矢印は両チームとも濃い青色になっていることが分かります。ただ、山口と新潟ではセンターバックからボランチ、もしくはボランチからセンターバックへのパス数が大きく異なっています。

パスソナー・パスネットワーク  パスソナー・パスネットワーク

山口は池上や佐藤健太郎がボールに関わる機会が少なく、2選手が関わる矢印は薄い水色のものしかありません。特に前半だけの出場となった佐藤健太郎はパス数がわずか14本。山口のボランチが新潟のファーストラインの背後でボールを受けて前を向く場面は前半はほとんどありませんでした。また、楠本卓海のパスソナーに着目すると、右側へのパス数が少なくなっており、ボランチだけでなく、サイドへのパスコースも制限されていたことが分かります。結果として新潟陣内へ侵入する回数は少なく、前半は思うような攻撃ができていませんでした。

一方の新潟はセンターバックとボランチの4選手間でのパスが非常に多く、色の濃い矢印が至る所に存在しています。新潟はボランチの選手が最終ラインに降りて3枚で回したり、山口の2トップの近くに立ったりすることで、センターバックへのプレッシャーを軽減させ、余裕を持ったビルドアップができていました。ボールの奪いどころを定められなかった山口はサイドハーフの選手がボールホルダーのセンターバックに寄せるなど、焦れて前がかりにプレッシャーをかけるシーンが何度かありました。ただ、そのような場面では同サイドのサイドバックへパスを繋がれ、サイドハーフの選手が素早く戻らなければならない状況になっていました。

思うようにボールを運べなかった山口余裕を持ってボールを動かすことができていた新潟。ビルドアップでの差が前半の0-2というスコアに繋がったのだと思います。


後半の変更

前半は攻撃面でほとんど何もできなかった山口ですが、後半は選手交代も含めて修正を図り、新潟の守備をかわすことができるようになっていきました。自分が感じた前半と後半の違いについて、ハーフタイム明けに交代した選手のスタッツを比較しながら書いていきたいと思います。

後半開始時に山口は2枚替えを行いました。1枚目はボランチの変更(佐藤健太郎→田中陸)です。

攻撃スタッツ - 佐藤 健太郎   ヒートマップ - 佐藤 健太郎

攻撃スタッツ - 田中 陸   ヒートマップ - 田中 陸

2選手のスタッツを比較すると、田中のパス数は佐藤健太郎の2倍以上となっており、敵陣でのボールタッチ回数も増加していることが確認できます。後半は田中がビルドアップ時に最終ラインに降りることで、3枚で回す頻度が前半よりも高くなり、新潟のプレッシャーを回避しやすくなりました。後方で時間が作れるようになったこともあり、センターバックからボランチや前線の選手へ向けた縦パスも増加。中を意識させることでサイドも使えるようになり、敵陣へ侵入することができるようになっていきました。

ハーフタイム明けに行った2枚目の交代は前線の変更(岸田→梅木翼)です。ボールタッチ回数は両選手とも多くないですが、岸田は左サイド、梅木は比較的中央でボールに触っていることがヒートマップから分かります。上述したように、センターバックからの縦パスが後半は増加しましたが、梅木は47分、49分と立て続けに縦パスの受け手となっていました。特に49分のシーンでは、楠本から梅木への縦パスによって新潟の選手5人を置き去りにすることに成功しており、縦パスを引き出す動きがチャンスに繋がりました。

攻撃スタッツ - 岸田 和人   ヒートマップ - 岸田 和人

攻撃スタッツ - 梅木 翼   ヒートマップ - 梅木 翼

山口は得点シーンでも交代で入った選手が活躍しました。途中出場の橋本健人が自陣からドリブルで持ち運びカウンターを仕掛けると、同じく途中出場の浮田へパス。浮田が積極的にミドルシュートを放つと、相手に当たったボールがループシュート気味になりゴールに吸い込まれました。

前半と比較すると後半の内容は非常に良くなっていました。この試合で見せた修正力が前半のうちに発揮されれば、あるいは立ち上がりから後半の内容を出せれば今季初勝利も遠くないと思います。


最後に

後半は内容が良くなったとはいえ、90分まで得点が取れなかったことは事実であり、まだまだ課題は存在します。ただ、開幕から連勝を続けている強い新潟に対しても十分やれていたので、次節こそ今季初勝利を挙げてくれる信じています。