ここまではリード後の試合運びが課題となっているサンフレッチェ広島

第5節では、2週間前のルヴァンカップでも対戦した清水エスパルスをホームに迎えました。


スタメン

フォーメーション図  フォーメーション図

広島は前節からスタメンを4人変更。過密日程のなか、鮎川峻がリーグ戦初スタメンとなった一方、東俊希はチームのフィールドプレイヤーで唯一となる5試合連続先発出場となりました。対する清水は前節から3人を入れ替え、システムも3バックから4バックに戻しました。


スタッツ

基本スタッツ

試合は1-0で広島の勝利となりました。広島は序盤から試合の主導権を握りチャンスを作っていましたが、前半は無得点。ただ、後半にコーナーキックから荒木隼人がゴールを決め、先制に成功しました。前節までの課題であったリード後の内容に関しては、守備の時間が多くなったものの重心が後ろに下がりすぎることはなく、押し込まれる場面は少なかったです。終盤は昨年までの5バックにシステムを変更し、クリーンシートを達成。今季2勝目を無失点で飾りました。

ゴール期待値

ゴール期待値でも広島が約1点分上回っており、1-0という結果に値する内容だったのかなと思います。

広島は30分過ぎまで被シュート数が0本。前半の45分間で見ても清水のゴール期待値を0.1程度に押さえ込んでおり、清水の攻撃を完全に封じていたことが分かります。一方、攻撃面では28分や43分に大きなチャンスを創出。特に、前半のなかでゴール期待値が最も高かった43分のシーンでは、権田修一のセーブに阻まれたもののシュートに至るまでの過程が良く、非常に惜しいシーンでした。

後半に入っても広島のペースは続き、清水が後半最初のシュートを記録するまでに20分以上の時間を要していることが分かります。広島の得点以降、清水はシュートは3本放ちましたが、いずれもゴール期待値は0.1前後。広島の課題であったリードした状況でも、危ない場面はありませんでした。


左サイド

パスソナー・パスネットワーク   エリア間パス図

パスネットワークやエリア間パス図のデータを見ると、広島は左サイドでボールを動かす回数が多かったことが分かります。この試合では、中盤の柴崎晃誠や森島司といった相手の間でボールを受けられる選手たちが上手くボールに絡み、他の選手にスペースや時間を与えていました。前半のなかでゴール期待値が最も高かった43分のシーンでは、清水のボランチの前にポジションをとった森島が左サイドの柴崎からのパスを受けて前を向き、バイタルエリアへ飛び出してきた川辺駿に繋いだプレーがチャンスの起点となっており、相手の間で受けるプレーが非常に効果的だったように思います。

また、清水の右サイド(中山克広と立田悠悟)が守備時に距離をあけることが多く、中山がセンターバックの佐々木翔へプレスをかけに前へ出ても立田は最終ラインに残っているというような状況が何度もありました。その際、中山が内側から前に出ていくため広島としては佐々木からタッチライン沿いの東へパスを通すことができ、東がフリーで前へ運べていました。

時折、立田が前へ出て東に寄せようとする場面もありましたが、その際には森島や前線の2選手が背後のスペースへランニング。28分には立田の背後をとった浅野雄也のドリブルからシュートチャンスを作り出すなど、清水のプレス状況に応じて攻め方を変えていました。

鮎川・浅野両選手のヒートマップを見ると、ともに敵陣左サイドが最も濃い色となっていることが確認できます。先ほど示したパスネットワーク図でも、2選手へ向かう矢印はどちらも左サイドから出ており、左サイド中心の攻撃だったことが各種データから明確になっています。

攻撃スタッツ - 鮎川 峻   ヒートマップ - 鮎川 峻

攻撃スタッツ - 浅野 雄也   ヒートマップ - 浅野 雄也


ポジション・システムチェンジ

この試合、広島の得点はセットプレーからでしたが、前半はショートパスによる崩しから、得点以降はカウンターからチャンスを作るなど、さまざまなパターンから清水ゴールに迫っていきました。特にカウンターに関しては浅野や途中出場のジュニオールサントスが単独での仕掛けからゴールを脅かしており、点を取りに前がかりになっている相手に対して非常に有効だと感じました。

また、リードした状況での守備に関しては交代を上手く使い、システムを変更するなどして最後まで隙を見せていませんでした。ピッチ上の選手たち、特に後ろの選手たちは時間帯によって全体のシステム・各々のポジションが変わることで難しい部分もあったと思いますが、各選手がそれぞれの役割をしっかりと遂行してくれていました。

特に、今津佑太(右SB→4バックの右CB→3バックの右CB)や佐々木翔(4バックの左CB→左SB→3バックの左CB)、途中出場の野上結貴(右SB→右WB→ボランチ)などは後半の20分間で3つのポジションを務めており、無失点に対する執念のようなものをチーム・城福監督から感じました。昨シーズンに続き今季も過密日程となっているので、ピッチ上の11人に応じてポジションやシステムを変更できるのは非常に良いことだと思います。


最後に

広島は今季リーグ戦初のクリーンシートを達成。リード後に防戦一方になるようなことはなく、清水に決定的なチャンスを与えることはありませんでした。次節以降も今節のような試合運びを継続してもらいたいです(欲を言えば複数得点が望ましいですが笑)。