前節の勝利で今季初の連勝を達成したレノファ山口FC

天皇杯との兼ね合いによりミッドウィーク開催となった第15節では、アウェーでブラウブリッツ秋田と対戦しました。


スタメン

フォーメーション図  フォーメーション図

秋田は前節と同じ11人を起用。一方の山口は前節から2人を変更し、澤井直人と小松蓮を先発メンバーに起用しました。


スタッツ

基本スタッツ

試合は1-1の引き分けという結果に。秋田は後半に退場者を出し、30分以上にわたり10人での戦いを強いられましたが、それでも山口よりも多いシュート数・枠内シュート数を記録しました。

パス成功数やボール支配率に関しては、山口が上回る結果となっています。ただ、前半のボール支配率はほぼ互角であり、退場がなければ違った割合になっていたと思います(参考:https://www.football-lab.jp/r-ya/report/?year=2021&month=05&date=19)。

ゴール期待値

ゴール期待値のグラフを見ると、退場者が出る60分頃までは秋田、そこから先制点までは山口、そして試合終盤は再び秋田がそれぞれ試合の主導権を握っていたことが分かります。

山口側から見ると、60分近く秋田の攻撃を凌ぎ続けた後に、退場&先制点という流れだったので、最後に追いつかれたことは悔いが残ります。ただ、最終的な秋田のゴール期待値が2.23であることや、負傷交代もあったことを考えると、負けなくてよかったと捉えるべきなのかなとも思います。


手を焼いた右サイド攻撃

この試合、前半は終始秋田のペースでした。

秋田は最終ラインでボールを回すことはほとんどせず、シンプルに前線へロングボールを蹴ってきていました。山口は競り合い後のセカンドボールを拾われたり、マイボールにしても素早い寄せで奪われたりしたため、落ち着いてビルドアップする時間をほとんど作れませんでした。

秋田のパスネットワーク図やエリア間パス図を見ると、最終ラインでの横パスはほとんどなく、チーム全体のパス本数も少ないことが確認できます。同時に、秋田の攻撃は主に右サイドからだったことも分かります。右サイドハーフの沖野将基、そして右サイドバックの鈴木準弥はチームで2人のみである30本以上のパスを記録。エリア間パス図では右サイドに矢印が多く、一番深いエリアまで何度もボールを運べていたことが伺えます。

パスソナー・パスネットワーク  エリア間パス図

沖野のヒートマップを見ると、ボールタッチ位置を示す点がアタッキングサード内に多く存在することが確認できます。ボールタッチ位置がこれだけ深い位置に集中していることは珍しいですが、それよりも稀なのはなんといってもクロス数だと思います。沖野のクロス数は両チーム合わせてダントツトップの15本(ちなみに2位は川井歩の5本です)。パス数の約半分がクロスということを考えると、その割合の高さにも驚かされます。

攻撃スタッツ - 沖野 将基  ヒートマップ - 沖野 将基

一方、クロス数15本に対して、ラストパス数1本というのは少ないかもしれません。ただ、決してクロスの質が極端に悪かったわけではなく、沖野は山口の守備陣が処理しにくいボールを何本も供給していました。特に38分、41分などのクロスはキーパーとディフェンスラインの間を通っており、中の味方が触れていればゴールになる可能性は非常に高かったと思います。

また、右サイドバックの鈴木もクロス数3本にラストパス数4本を記録。前半、山口は失点こそありませんでしたが、秋田の右サイド、沖野・鈴木両選手に苦しめられていたと思います。

攻撃スタッツ - 鈴木 準弥  ヒートマップ - 鈴木 準弥


退場&負傷

後半に入っても秋田のペースが続いていましたが、56分に秋田のキーパー田中雄大が一発退場となったことで、試合の展開は大きく変わりました。

秋田は前線の枚数を削り4-4-1のシステムに変更。秋田が1トップになったことで、山口は3バックでボールを動かせるようになり、徐々に攻撃の時間は増えていきました。秋田のサイドハーフが前へ出てプレスをかけにくる場面も見られましたが、池上丈二や神垣陸などが相手の間に動くことでボールを引き出し、プレスを回避していました。

特に池上は数的有利になってから持ち味を発揮できるようになり、ハーフスペースやポケットといった相手の嫌なところを使えるようになっていきました。69分には「ボランチとサイドハーフの間」→「前に出たサイドバックの背後」→「ペナルティエリア内への斜めの飛び出し」というようにスペースを狙う動きを続け、最終的には高井へのラストパスで決定機を作り出しました。また、83分にはコーナーキックで渡部博文のゴールをアシストしており、ゴールに結びつくプレーを見せてくれました。

攻撃スタッツ - 池上 丈二   ヒートマップ - 池上 丈二

得点を決めた渡部はこれが山口加入後初ゴール。前節までフルタイム出場を続け、チームを支えてくれていたので、ゴールが生まれたことは非常に嬉しかったです。ただ、シュートを放った後に相手と接触したことで鼻骨付近を負傷。渡部はピッチに戻ることはできず、今シーズン初めて渡部不在で残り時間を戦うこととなってしまいました。

攻撃スタッツ - 渡部 博文   ヒートマップ - 渡部 博文

その影響もあってか、アディショナルタイムにクロスのこぼれ球を押し込まれ失点。10人ながら同点のためにパワーを出してきた秋田の攻撃を防ぎきれず、勝ち点1となってしまいました。

また、この試合では田中陸が相手と競り合ってピッチに倒れた後に脳震盪のような症状を起こしたため、キックオフからわずか数分後に交代。さらに、後半の立ち上がりには相手との接触でキーパーの関憲太郎が顔から流血する場面も見られました。

加えて、秋田戦の3日後に行われた天皇杯一回戦後の渡邉晋監督のコメントによると、「山口に戻ってからのトレーニングで負傷者が相次いだ」とのことであり、怪我人が増えています。

幸いにも、ここからしばらくはミッドウィークの試合(連戦)がないので、チーム一丸で乗り越えてほしいと思います。


最後に

3連勝とはなりませんでしたが、主力の負傷交代が2度もあった中、アウェーで勝ち点1を獲得できたのは大きかったと思います。天皇杯ではPK戦で敗れてしまいましたが、気持ちを切り替えて次節に挑んでほしいです。