ザスパは64分に加藤潤也の今季初ゴールで先制するも、直後の66分に同点に追いつかれ、さらに97分に痛恨の決勝ゴールを決められた。

大雨のピッチ、得点直後の失点、後半アディショナルタイムでの失点と後味の悪い試合になった。


基本スタッツ


大雨のなかで行われた今節。自陣と敵陣でボールの転がり具合が違うなど、難しいピッチコンディションでの試合だった。その中で、ホームのアドバンテージを活かしたのは山口だった。

3トップが高い位置をとることで、サイドチェンジのボールを有効活用した。エリア間パス図をみると、左サイドから右サイドへのサイドチェンジが多く送られている。

一方の群馬は、ピッチコンディションに苦戦し、敵陣で有効なパス回しをすることができなかった。



エリア間パス図エリア間パス図



勝負を分けた『はっきり』


難しいピッチ状態で勝負を分けたのは、"はっきり"とプレーする姿勢であった。

DAZN越しでも大槻監督の「はっきり!」というコーチングが聞こえてきた。

ボールがイレギュラーなバウンドや転がり方をするので、細心の注意をもって大胆にパスやクリアをすることが求められた。


得点シーンは「はっきり」とした守備から生まれた。

相手のトラップが大きくなったところを、内田が颯爽とボール奪取。

加藤の今季初ゴールにつながった。


雨で前進するのが難しい、ならば、相手の隙きをつけばいい。いい意味で吹っ切れたマインドから生まれたゴールだった。


守備スタッツ - 内田 達也攻撃スタッツ - 加藤 潤也



同様に、失点シーンでは「はっきり」が足りなかった

66分の場面では、畑尾が沼田を倒してしまいPKを献上。

死角からスルッと入り込んだ沼田のナイスプレーであったが、畑尾がキープを試みてワンテンポ待ってしまったことで沼田に入り込む時間を与えたようにも見えた。

DFやGKから「クリア!」の声掛けがあれば、十分クリア可能なボールであったようにみえた


攻撃スタッツ - 沼田 駿也


2失点目も「はっきり」不足。

後半アディショナルタイム、内田を負傷で欠いて10人のザスパは、勝ち越しを目指して攻撃することを選ぶ。

しかしラストプレーと思われたスローインを跳ね返され、素早く前線の沼田につながれると、沼田は川上をかわし値千金のゴールを決めた。


この場面で問題なのは、攻撃を選んだ際の「はっきり」が足りなかったことだ。

まずはスローイン。急いで入れたボールは短くなり、得点の匂いが感じられなかった。はっきりと冷静にゴールをイメージして攻める必要があった。

次にかわされたシーン。川上は沼田に寄せて果敢にボールを取りに行くが、かわされてしまう。かわされる可能性を考慮してタックルにいく準備も必要だっただろう。はっきりとゴールを守り抜く決断をする必要があった。



ここまで、勝負を分けた"はっきり"に触れてきたが、なぜ"はっきり"が不足したのか、私なりの仮説を述べて終わりにしたい。

ザスパの選手は非常に真面目だ。90分サボらず攻め守り、チームで表現したいサッカーに貢献している。だからこそ、チームの約束事や基準が浸透しているこそ、悪天候のなかで新しい基準で統一した動きをすることが難しかったのではないか。


図で、示すと下のようなイメージだ。

監督から"はっきり"と指示があったとき、経験豊富な選手(選手A)は"はっきり"基準に切り替える。一方、若手選手(選手B)は普段の基準をもとにプレーを"はっきり"基準に近づける。この結果、選手Aと選手Bの間には、認知・意思決定のギャップが生まれてしまう。

このような状況がピッチ上で起きていたのではないだろうか。


このような自体を避けるためには、チーム内で複数の基準を持つことが求められる。そのためには、長期間かけて戦術的な積み上げが必要となるだろう。

大槻監督とともに、クラブの歴史と強さを伸ばしていけるのか、ザスパの今後に注目だ。