ミッドウィークの木曜日、私は新大久保にいた。駅前の商店街を歩くこと数分、突然に鳥居が見えてきた。

目的地は皆中稲荷神社(かいちゅういなりじんじゃ)。願いが皆、的中するという大変縁起のいい名前の神社で、金運やギャンブル運にご利益のある場所として知られている。


※皆中稲荷神社(画像がなぜか横回転してしまった)


ここを訪れた目的はただひとつ。以前のレビューでも書いた通り、ザスパのセットプレー運の向上をお祈りするためだ。

セットプレーはギャンブルの要素も強いと思っているので、豪運に定評のあるこの神社を訪れた。

境内には宝くじやライブの当選をお祈りする絵馬がたくさん飾られていたが、その中にサッカーボールのイラストを添えて私の願いもお供えしてきた。

参考:セットプレーが入らないので、お参りに行きたいと思います【2022 J2第27節 大分 2-1 群馬 レビュー】 | SPORTERIA


※飾った絵馬



お参りのご利益があったのか、甲府戦ではデザインされたセットプレーから見事得点。山形戦に続いて2戦連続でセットプレーからの得点となった。

お参りは大事。神様はしっかり絵馬を見てくれたようだ。


ザスパは感染症の影響もあり、FWがベンチに0人と苦しい台所事情となっている。そのなかで、セットプレーという貴重なチャンスを決めきった。

また、今節は甲府も同じ状況で、スタメンをほぼ総替えでの戦いだったようだ。後半37分には遠目からのクロスに三平がうまく合わせて同点。一瞬の油断を見逃さない、まさに点取り屋といえる見事なヘディングだった。


まずは、両チーム非常事態のなかで、このような鬼気迫る試合を見ることができたことに感謝をしたい。そのうえで、今節のレビューを簡単に行いたいと思う。



基本スタッツ



ザスパは前節終了後に加入が発表された鈴木国友がいきなりスタメン出場。しかし、前半最初の交錯で負傷してしまい、ベンチに下がることに。緊急事態に非常事態が重なったザスパ、鈴木のかわりにボランチの奥村が出場するも、やはり攻守ともに後ろに立ち位置をとりがちだった。特に、2トップでの規制が効かなくなり難しい試合となってしまった。



攻撃スタッツ - 鈴木 国友攻撃スタッツ - 奥村 晃司


ヒートマップ - 鈴木 国友ヒートマップ - 奥村 晃司



このような背景があるので、今節は非常に評価がしづらい試合となっている。攻守のタスクを遂行する選手が物理的に存在しない状況のなかで、攻守のほころびや改善点を考察しても、今後の試合の参考にならないからだ。「1-0から追加点を奪えず、終盤に追いつかれ勝ち点2を失った試合」と評価することもできるが、どちらかといえば、選手ひとりひとりが自身の殻を破ろうと試行錯誤していて、今後にむけた伸びしろが光る試合だったと感じた。

※デザインされたセットプレーもこの試行錯誤の1つだろう


ということで、選手ひとりひとりの試行錯誤をデータとともに紹介していく。


まずは、風間。守備では右SHをつとめるが、攻撃時には内側で起点になる回数が増えたように感じた。長短のパスに長けた風間が内側にいるのは頼もしい。

ヒートマップ - 風間 宏希


前節に続きスタメンの岡本。風間が空けた大外のレーンを有効活用。天笠からの鋭いクロスを全力疾走しながらマイナスにリターンするという見事なプレーも魅せた。

ヒートマップ - 岡本 一真


キャプテン細貝。攻撃時にサイドに開いてサポートする機会が増えたように感じた。天笠や岡本のために積極的にデコイランも行い、攻守に体を張って闘志あふれる90分だった。

ヒートマップ - 細貝 萌


センターバックの畑尾と城和。ビルドアップ時にフェイントやドリブルで自分で剥がそうとする姿勢が目立った。前線にできる限りスペースを与えようとする、最終ラインからの熱いエールが伝わってきた。


ヒートマップ - 畑尾 大翔ヒートマップ - 城和 隼颯




そして、今節で一番アピールに成功したのは【勝利を担う熱きドリブラー】こと山中だろう。

普段よりも1列前の左WBで途中出場すると、自らの異名にもあるドリブルで魅せた。敵陣を高速ダブルタッチで切り裂き、相手DFから激しいチャージを食らう場面が2度あった。1度目はファウルをもらえなかったが、2度目はファウルを獲得。あわやゴールかというフリーキックにつながった。

守備でも、相手ウィングとの激しい走り合いを2度繰り広げた。1度目は相手にボールを渡してしまうも、2度目は予測を向上させ見事競り勝った。


このように、山中は試合の中で修正を行い、2度めのプレーをものにする機会が目立った。もし、準備と予測が磨かれ1度目から成功できるようになったら、攻撃的なウィングバックとして違いを作れる選手になるだろう。

山根永遠の移籍が発表され、激化が予想される左WB争い。新しく名乗りをあげるのは山中かもしれない。


攻撃スタッツ - 山中 惇希ヒートマップ - 山中 惇希



以上、お参りと甲府戦を振りかえった。甲府戦は難しい試合状況のなかで、選手がなんとかしようと努力する様子が目立った。この創意工夫が来週以降の勝利につながっていくことを期待したい。

冒頭にも述べたとおり、今節は両者非常事態のなかでの開催となった。互いに譲らない1戦となったが、その裏では苦境や不安を乗り越えるための膨大なエネルギーが必要だったと思われる。選手・スタッフ・Jリーグに関わる皆様への感謝とリスペクトを忘れずに、来節以降もデータを眺めて考察していこうと思う