先週の6失点が嘘のように堅守をみせたザスパは、今季9度目のウノゼロ勝利をおさめた。

支配率は40%、期待ゴールは相手を下回るが少ないチャンスを決めきる。今年のザスパらしい勝ち方だった。

いつものザスパに戻った原動力として、スタメンに復帰した畑尾城和のCBコンビの存在が大きいだろう。特に得点を決めた畑尾大翔に注目してレビューをしていく。


基本スタッツゴール期待値


畑尾大翔の武器


畑尾大翔の武器は、CBに必要な技術を高水準で備えていることだ。空中戦、対人、ロングフィード、どれも一級品だ。

特に空中戦の強さはFootballLabのランキングでも上位にランキングしており、この試合のヘディングシュートは1ゴール1ポストと脅威となっていた。


参考:Football Labのプレースタイル指標ランキング

守備:71.7 (9位)

空中戦:73.3(12位)


攻撃スタッツ - 畑尾 大翔


そして、負傷や不調の波が少なく、高い技術を1年間通してどの試合でも試合終了まで発揮できる点だ。

特に今節は、畑尾の鉄人っぷりが目立った試合となった。


前半には、ザスパの選手間での交錯が2回あった。1度目は、櫛引・畑尾・相手選手の交錯。2度目は畑尾と城和の交錯。

特に2度めの交錯は頭同士が当たっているようにみえ、パフォーマンスに影響がでるおそれもあった。

だが、畑尾は何事もなかったように立ち上がりプレーを続けた。


極めつけは、86分の出血のシーン。

競り合いで相手の腕が眉間に入った畑尾は一旦ピッチに膝をつくものの、すぐに立ち上がり、出血していることを確認しながら普通にディフェンスラインに戻った。そしてオフサイドでプレーが止まってようやくピッチにうずくまった。

プレーが止まるまではCBとしての責務を全うする闘志あふれる一幕となった。

(もちろん、頭部は命に関わるのですぐに立ち上がらないでほしいのだが)勝利にかける執念が伝わってきて、こちらも胸が熱くなった。


止血にかかった時間は約8分。畑尾にとって初裂傷・初ホチキス・初縫合だったそうだ。

その状態で普通に試合終了(102分)まで出場し、パワープレー気味になった大宮の攻撃を跳ね返し続けた。

また、止血している間(※)にザスパはフォーメーションと立ち位置を整理。選手も体力が回復したのか、いいクロスをあげさせまいと試合終了まで守備に走り切ることができた。

今日の畑尾は神がかっていたので、地上や空中だけでなく時空も制御可能だったようだ。止まった時計を有効活用し、最後まで冷静さを保ったザスパは6ポイントゲームを勝ちきった。

※頭部の出血だったため、ピッチ内で止血が行われた。体を動かさないように対応してくれた審判団、状況を理解し冷静に見守ってくれた大宮の選手、畑尾に暖かい拍手をおくった大宮サポーター、リスペクトにあふれる素敵なシーンだった。


守備スタッツ - 畑尾 大翔



不屈の男


さて、ここまで畑尾の活躍にスポットライトをあてて大宮戦を振り返ってみた。畑尾大翔の不屈っぷりが伝わってきたと思う。

ご存知の方もいると思うが、畑尾は大学4年時に大病(肺塞栓)を患ってサッカーができなくなったことがある。一時はサッカーを辞め、就職活動をする道も模索したという(※)。なんとか治る可能性をみつけ、懸命のリハビリに取り組み1年半おくれでプロ入りしたという過去をもつ。

大病にも負けず、相手FWにも屈しない。逆境を跳ね返し続ける不屈の男に、あふれんばかりの勇気をもらったゲームだった。


※内定を断って入団してくれた瀬川祐輔など、ザスパは就職活動のエピソードがある選手が多い。そういった意味で運命を感じる。


残留にむけて一安心している暇はなく、週末に試合は訪れる。

畑尾の不屈がチームへと伝染し、もっと強いチームになっていくことを願っている。