1、前置き


 最近は、長くなっていましたが、今回は時間が限られている事もあり、今回シンプルにこの図のみで行きますよ。それにしてもこれだけ分かり易い図があるとは、久々に良いデータですね。解説者の方も少し触れていましたが、ファジサポの私が、深堀していきますよ。それでは、よろしくお願いいたします。


2、情報が詰まった有馬戦術の縮図(前半)


時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(岡山)


「前半0~15分(前から守備)」

 キックオフの心身共に、まだトップフォームに到達していない時間帯。当然、動きが悪くなりがちで、ミスも生じやすい時間帯。という事で、前からプレスをかけていくことを強く意識した入りです。同時に、前線からハードワークしていく事で、コンディションを整える狙いもあります。奪いきって、電光石火の先制点が理想ですが、現代サッカーでは、そういったミスを誘発し、ショートカウンターで、得点を奪うというのは、簡単なミッションではないでしょう。ただ、前から行ってサイドで、奪取するというのは、SBが高いポジションになっている事から明らかです。


「前半15~30分(中央からサイドへ)」

 この時間帯になると、プレスも控え目になります。北九州も岡山のプレス(守り方)に慣れてきた中で、自分達のサッカーを出来始める時です。北九州が、中央攻撃が得意という事で、中央に人数を掛けて、サイドでの奪取を狙いつつ、中への仕掛けを誘います。中に入ったらそこでボール奪取し、前線につける。そこから中央が無理なら、迷いなくサイドに展開。そこからクロスをどんどん入れて19ミッチェル・デュークをシンプルに使って行く。これが今の岡山の基本スタイルです。サイド攻撃まで行かれてしまうことがあっても、サイドや前線に人数をかけてきた所を、前述した通りセカンドボールを拾ってから素早く、ロングカウンターを常に狙って行く。攻撃が仕掛けている時は、切り替えやポジショニングで守備を維持できますが、そう簡単ではありません。まさにピンチの後にチャンスありです。


「前半30~45分(パスワークとサイド攻撃)」

 流石にこの時間帯は、多少運動量が落ちる時間帯です。という事で、前述の縦に付ける速攻に加えて、細かいパス交換を増やす事で、自分達主導権を握って進める事で、好機を狙いつつスタミナの消耗を抑えます。仕掛けるというよりは、連携したプレーをある程度意識する事で、距離感が近くなり、パス数も増えています。ここまで、ゲームプランではあると思いますが、先制点を常に狙っているという点では、想定内であっても狙いの1つは、空振りに終わっています。


3、情報が詰まった有馬戦術の縮図(後半)


 長くなったので、図の再アップも行い、後半戦に突入します。

時間帯別パスネットワーク図

時間帯別パスネットワーク図(岡山)


「後半0~15分(人数をかけた攻撃解禁)」

 前半、岡山のサッカーを展開した事で、消耗した北九州の出だしが遅くなると踏んで最初のエンジンを点火します。前半は、中央を固める事をある程度意識していましたが、この時間帯は、ある程度サイドに人数を掛けることをより強く意識した時間帯です。中央によりがちであった15~45分と違い分散しているように、各自の判断で、ある程度自由に攻めて行く。もちろん、闇雲に人数が揃っている所を攻めるのではなく、基本スタイルに、人数をかける攻撃や、人数をかけない守備やエリアをあえて作る所で、スコアを動かす事を強く意識している事が良く分かる時間帯です。明らかに先制点を狙っていますね。ただ、バランスを大きく崩さない所が、岡山の堅守の所以でしょう。


「後半15~30分(木村砲点火)」

 さぁ、主力エンジンの点火です。具体的にというかはっきり言うと、ここまでが戦術「ミッチェル・デューク」であれば、ここから戦術「木村 デューク」です。縦に付けて、シンプルにサイドから崩すという攻撃に、中央を挟まずに、27木村 太哉のドリブルでの突破力と、キープ力で、一気にゴール前に迫っていくという攻撃です。右サイド主体であった攻撃も、この時間帯からは、左サイドが主体になります。この様に岡山は、時間帯によって変化を付ける事で、相手に守備の修正をその都度迫る事で、主導権を握り易い展開に持ち込むという狙いを秘めています。左サイドだけかと思ったら、7白井 永地と攻撃的なSB16河野 諒祐が、右サイドの奥で、ゴールやアシストを狙って、スペースを窺っています。まるで、隠し玉のように、左に意識を集めさせる事で、実は右が狙いでした。そういった恐ろしい狙いを秘めています。また、ターゲットが27木村 太哉と19ミッチェル・デュークになった事で、マークの分散をさせる事で、ゴールに迫る狙いもあります。前半から変化につぐ変化で、ゴールを開けようという工夫や狙いが分かりますね。


「後半30~45分(攻守で勝利への圧)」

 解説者は、守備固めと表現したが、岡山の3バック(5バック)は、単なる守備固めではない。後ろに3人だけ残して、守備時以外は、WBが常に高めにポジションを取り、サイドのスペースを狙い続ける。特にWBに回った27木村 太哉は、ドリブルでこの苦しい時間にどんどん仕掛ける。8田中 裕介も半分WB半分CB(SB)として、バランスを取る事で、守備の隙を消しつつ、CBもできる高い奪取力で、カウンターも狙う。もちろん、足下も巧いので、得点に絡める可能性もある。CBも5井上 黎生人と22安部 崇士の攻撃参加も4バックよりは行い易く、4濱田 水輝は、セットプレーやパワープレーでも頼りになる。6喜山 康平も7白井 永地も攻守での安定感は抜群。攻撃的なユーティリティな2選手がシャドーに回る。トップ下適性が高く直接得点も狙える14上門 知樹と、ウイング適性が高く、ドリブルやキープ力、スピードを活かした崩しが期待できる18齊藤 和樹。そして、トップには説明不要の19ミッチェル・デューク。状況に応じて、一発のある20川本 梨誉を入れる選択肢もある。なんといっても後方には、安定感抜群のキック精度と機動力に優れる現代的なGKの要素を兼ね備える31梅田 透吾がいるので、CBを含め、全員守備全員攻撃の有馬ファジ式トータルフットボールで、勝ち点3を狙う。バランスを保つのが難しい時間帯で、状況に応じて、様々な戦い方が必要になるが、そういった対応力のある安定した守備と、攻撃力を備えたシステム。それが、岡山の3バック(5バック)。


4、総評(これがサッカー)


 ここまで、岡山のしたいサッカーが出来ていたという内容の試合であったと書いてきたが、それでも勝てない時があるのもサッカー。逆に自分達のサッカーが出来なくても勝てることのあるのがサッカー。そういった意味で、「勝ちたかった試合」というのをデータで見ると、こういった試合になるという、良い例の試合と言える。是非ともこういったデータを次の結果に繋げて欲しいと岡山サポとしては、そういった感情を抱くし、次の試合での勝利に期待したい。


文章・図版=杉野 雅昭(text・plate=Masaaki Sugino)、図(データ)=SPORTERIA様


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