本レビューでは、岡山の試合において史上初のPKによるゴールが、両チーム合わせて3ゴールも生まれた山口戦を、データで読み解いていきたい。


余力があれば、こちら事前にチェックして頂けると、より楽しめると思います。

2022ファジにデータでフォーカス4「勝負を分けるのは個の力か?組織の力か?」2022 J2第31節 岡山 - 山口 プレビュー

は、こちら(同サイト)。

URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6963832180250251265


1、基本試合データ


基本スタッツ

基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


基本スタッツのポイント

①得点が決まる可能性のある枠内シュート数と得点では岡山が上回っている。

②ボール支配率に対し、各セットプレーの回数も多くなっていることから山口は、比較的効率の良い攻撃ができている=山口のやりたいサッカーはできていた。

③岡山は、支配率が低いが得点の部分で、山口を上回っていることから手数の少ない攻撃ができている=岡山の良さも出ている。

④微妙なオフサイドと厳しいPK判定(2つ目のPK)もあったことを考えると、かなりの接戦であった事が、このデータからも既に分かる。


基本布陣図(図=figure:杉野雅昭)


2、ゴール期待値


ゴール期待値

ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


ゴール期待値のポイント

①私がレビューを書いてきた中でも1位、2位を争う大接戦の僅差。

②最序盤以外は岡山が優位であるのは、リードしているという側面が強い。詳細不明だが、そういった傾向が強いように感じている。

③中盤~終盤にかけてやや突き放すことに成功している。

④最後の最後に迫られているのは、4濱田と24成瀬でクローズに入った側面は強い。

⑤ゴール期待値で逆転することがなかった理由をこれから探っていく。


3、パスソナー・パスネットワーク


パスソナー・パスネットワーク

岡山側のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


パスソナー・パスネットワーク図のポイント(岡山側)

①少ないパス数でも枠内シュート数で山口を上回れている=岡山のサッカーもできている(良い形を作れている)。

②27河井と14田中のパス数が少ない≒27河井は混戦で攻撃を繋ぐのが巧い選手、14田中は混戦での守備が巧い選手がボールに関与できない=中盤~前線における岡山のプレスが山口のポゼッションにすり抜けられていた。

④DFラインにおいてのパスの平均距離が長めとなっていることからロングパス主体で、中盤を経由する回数は少なめ。

⑤パス数が23バイス<5柳であるのは、23バイスに対しての山口の警戒度の高さを示すデータ。

⑥26本山のパス数を見ても、ここでの展開力UPは攻撃面で改善を期待できる可能性がある=34輪笠 祐士の獲得の狙いの1つ?


パスソナー・パスネットワーク

山口側のパスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


パスソナー・パスネットワークのポイント(山口側)

①パス数で岡山を圧倒、ポゼッションを意識したサッカーであったことが分かる。

②左サイドが多めとなっている=岡山の武器のサイド攻撃抑制とその背後を狙う意図、守備があまり得意でない16河野のサイド明確に狙う意図などが山口にあった可能性がある。

③平均距離が長めの選手も多く速攻と遅攻のバランスの良い攻撃ができるチームであることが分かる=岡山のプレスを回避する術の多いパスワークが可能であった。

④両チーム最多の67本のパスを記録した15前 貴之=DHとしてバランスを保ち、攻守で岡山の狙いを防ぐ、つまり攻撃では、プレスをかわす動きのフォロー、守備では奪った後にしっかりマイボールにできるフォローができたいた可能性が高い。

⑤41桑原→49梅木のラインが通されてしまっている=岡山が対応しきれていなかった事を示すデータ。


4、時間帯別パスネットワーク図


時間帯別パスネットワーク図

岡山側の時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


時間帯別パスネットワーク図のポイント(岡山側)

【前半:0~15分】

15デュークをターゲットとしたロングパスを軸とした攻撃が多めとなっている。

41徳元と27河井が関与できておらず、山口の展開するサッカーにおいてなんらからの影響を受けている。

【前半:15~30分】

同時間帯内に、1点返されたが、2点リードした事で、繋ぐ意識、ボールを大事にする意識が高まった。結果的に、受ける時間帯でもあり押し込まれる時間帯ともなった。また、山口側の攻める意識も高まり、1点返されるゴール前のシーンが生じた。ただ、両SBは高い位置で触る回数も増えているので、攻める意識もしっかり持っていることが分かる。

【前半:30~45分】

1点返されたことで、追加点を狙う意識とリスクを負いたくない意識を両立した戦いを展開して行く中で、DFラインに中盤を吸収することで、山口のピッチを広く使った攻撃に対応する動きが見て取れる。また、1人で勝負できる15デューク、7チアゴ、22佐野の高い位置でのプレーも増えた。

【後半:0~15分】

監督の指示があったのか、DFラインから前線までバランスの良い距離感を保てていた。実際に、この時間帯は、腰を据えたサッカーを展開していて、静かで安定感のある時間帯であった。途中から採用する3バックへの自信も感じられる。

【後半:15~30分】

3バックシステムの効果覿面、ほぼ山口側でのプレーが続いたことで、両CBもハーフウェーライン付近まで迫っている。GKのタッチがないので、被シュートもGKへのバックパスもなかったことが分かる。この時間帯に決勝点を奪えており、岡山の時間帯であったことは間違いなく、岡山式3バックの強力さ示すデータとなっている。

【後半:30~45分】

攻勢にでる山口に対してもほぼ対応できたことを示す時間帯。受けにならず、むしろ相手陣地でプレーできたことで、結果的に逃げ切ることに成功した。また、この時間帯に来て、アッタキングサードやミドルサードに近い位置でのボール奪取も増えた。リトリートのみにならない岡山式守備固めができた。まさに、相手陣地でプレーする時間帯を増やすサッカーを目指している木山監督のサッカーを体現できている。また、GKより後ろの平均ポジションとなっている23バイスのポジションを見ても、山口の最後の攻勢に対してもしっかり対応できたことが分かる。


時間帯別パスネットワーク図

山口側の時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


時間帯別パスネットワーク図のポイント(山口側)

【前半:0~15分】

岡山のハイプレスをほぼ狙い通りに、かわして前線まで運ぶことができていた事が分かる時間帯。またサイドと中央を使った攻撃も効果的にできていたことが分かる。それだけに山口側にとっては、最初の不用意なハンドのPKは悔やまれる。

【前半:15~30分】

良い距離感を保ちコンパクトにできたが、2点リードを許した通り、押し込めた時間帯とまでは言えない時間帯であった。それでも山口のサッカーはできた時間帯で、シュートまで行ける攻撃の回数も多く、そのシュートの内の1本でPKを獲得し、1点返す事もできている。

【前半:30~45分】

各選手の平均ポジションとパスの回数的のデータのとしては、100点に近い。DFライン~前線まで良い距離で巧く分布できていて、ピッチを広く使えた上に、パスでの打開を図るエリアでは、真っ赤になるほどの回数と近すぎるぐらいの距離感で、パスを繋げていることが分かる。その結果、そのパスが真っ赤になっている左サイドのところで、15デュークのファールを誘うことに成功し、そこで得たFKで、同点に追いついた山口。前掛かりになり過ぎず、低くなり過ぎず、山口のサッカーの良さが出た時間帯で、岡山が追いつかれるべくして追いつかれたと言える時間帯であった。

【後半:0~15分】

岡山が、全体のバランスを意識したサッカーを展開してきたことで、ボール保持こそできたが、シュートまでいくことができた回数は、前半30~45分と比べると激減した。ただ、内容的には五分であり、次の1点の重要性を理解している両チームが、お互いをリスペクトし、残りの時間帯で勝負するという意識が働いたと考えることもできるが、逆に山口がもしここで勝負に出ていたとするのであれば、岡山に巧く守られてしまったという時間帯になってしまう。

【後半:15~30分】

前線から中盤へのパスが分断されてしまった時間帯。岡山の3バックに対して、対応ができずに、自陣でプレーすることが増えた山口。前半になかった岡山のロングスローやCKなど回数が増えたことで、完全に受けに回る事となった。前線でターゲットとなる49梅木が下がったことで、自陣で繋ぐに留まる攻撃の回数が増えってしまった結果、CKから5柳の決勝ゴールを許した。山口は、サイドからの活路を探る意識もあったが、守備時に5バックになるため、蓋をされていたので上手く機能しなかった。

【後半:30~45分】

前に人数をかけていくことで、平均ポジションを押し上げた山口。岡山陣地に進入した回数と進入した人数こそ増えたが、その反動で、後で保持するための人数が不足し、岡山のハイプレスを回避するための「スペースと時間(パス距離が長くなるとパスカットされるリスクが高くなる)」が、足りなくなった。この結果、岡山に山口陣地深くでの奪取を何度も作られてしまったに対して、山口は決定機らしい決定機を作る事ができず、最後まで岡山の3バックを攻略できなかった。


5、エリア間パス図


エリア間パス図

岡山のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


エリア間パス図のポイント(岡山側)

①前面的にパス数が少なく、局面で繋ぐ意識より、仕掛ける・動かしていく意識が高いことが分かる。

②リターンパスが少なく、時計回りのような流れになっている=密集地を避けてボールロストのリスクを流していく意識が高いことが分かる。

③左中央~~左上でのリターンパスは、22佐野と44仙波のパス交換の可能性が高い。

④自陣では対角線のパスが多い=対角線を意識している可能性が高く、そのコースの延長線上に意識あることが分かる。

⑤山口陣地でのパス成功率は低く、90分間で考えると、難しい時間帯も長かったことが分かる。

⑥「⑤」の中で、16河野のクロスの可能性の高い成功パス数のエリアがある=自分達のサッカーができた時間帯もあることが分かる


エリア間パス図

山口のエリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


エリア間パス図のポイント(山口側)

①パス数の多さからもポゼッションサッカーであることが分かる。

②自陣でのパス数が少なく、前に運ぶのが巧いことが良く分かる。

③比較的岡山陣地深くでもパス数が多く、ピッチを広く使えている=パス数も多く、人数をかけた攻撃もできている。

④中央にパスも集まっており、8佐藤や15前が、経由地点として巧く散らせていたことが分かる。

⑤中央でのパス成功率が最も高い=ピッチを広く使った上で、バランスのとれたサッカーを展開できている。


6、ボールロスト位置


ボールロスト位置

岡山のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


ボールロスト位置のポイント(岡山側)

①中盤でのボールロストが多くなっている=山口の重視しているエリアであり駆け引きや攻防の後がよく分かる。

②16河野の攻撃のホットポイントでのボールロストが少ない=回数が少なかった前半と攻める事ができ後半15~45分というデータの裏付けとなっている。

③16河野サイドの岡山陣地でのボールロスト多くなっている=前半巧くいかなかった時にそこでの攻防があったことが分かる。

④22佐野の所にボールが集まっているが、ボールロスト多い=22佐野ポジショニング良い上に、仕掛ける意識(トラップ・ドリブル・パスの選択が積極的)が、非常に高いことが分かる。


ボールロスト位置

山口のボールロスト位置(図=figure:SPORTERIA提供)


ボールロスト位置のポイント(山口側)

①気になる右下のボールロスト(岡山側も多い)=主に22佐野との激しい攻防の後の可能性が高い。

②「①」以外では、ディフェンシブサードでのボールロストが0=高いビルドアップ力と、高いラインを採用していた事が分かるが、その背後を突かれてPKを与える事となった。

③驚異の中央のバイタルエリアのボールロスト0=岡山の寄せの完全無力化により岡山の奪取力がださせなかった時間が長かったことが分かる。

④少ないボールロスト方向=攻撃時にやりたいサッカー(チームのベクトル)の約束事が徹底されている。

⑤右上のボールロストが多い=山口の強みである左サイドであった事と、16河野サイド(左サイド奥)の背後を突けたのに対し、右サイドは活用できなかった。


7、攻撃スタッツ(選手個人)


攻撃スタッツ - チアゴ アウベス

7チアゴの攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(7チアゴ・アウベス)

山口にボールを持たれた時間帯が長かった中で、ボールが収まった時に仕掛ける攻撃アクションの高い成功率からファジ史上最もプレーのクオリティが高い選手であることが分かる。


攻撃スタッツ - 河野 諒祐

16河野の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(16河野 諒祐)

リーグアシスト王を狙える数値に相応しく、ラストパスやクロスの回数が多めとなっている。そのプレーだけに特化していることもあり、その右足にかける集中力は高く、力みもない自然体のプレーができていることが良く分かる。


攻撃スタッツ - 仙波 大志

44仙波の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(44仙波 大志)

短い時間で、高い位置でプレーする中でも、パスでのチャンスメークだけではなく、枠内シュート1本を含めたシュート2本を打てている。パサーでありシャドーストライカーとしての潜在能力の片鱗が見えた。22佐野との連携は早くも良くなってきており、自ら得点を奪える能力があるとすれば、今後のゴールとアシストで、チームを救ってくれる試合が出てくるかもしれない。


攻撃スタッツ - 菊地 光将

2菊池の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(2菊池 光将)

パスの回数が多く、高い成功率が示す通り山口のビルドアップを支えた。セットプレーでは1ゴールを含む4本のシュートの放つなど、攻守で高い存在感を放った。


攻撃スタッツ - 佐藤 謙介

8佐藤の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(8佐藤 謙介)

チームの攻撃の舵取り役として、ラストパス5本、クロス3本を記録。プレースキッカーとして、アシストも記録した。岡山は、最後まで抑える事ができなかった。


攻撃スタッツ - 前 貴之

15前の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(15前 貴之)

最後尾から最前線まで、山口の選手がプレーし易いように縦横無尽に動き回り、的確なポジショニングで、味方選手をフォロー。チームトップのパス回数と高い成功率を記録。状況に応じて、シュートやラストパス、クロスも記録するなど、攻守でチームを支え、新加入とは思えないフィット感のあるプレーがみせた。


攻撃スタッツ - 桑原 海人

41桑原の攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


攻撃スタッツのポイント(41桑原 海人)

岡山の左サイドを切り裂いた高速ドリブラー。押し込めた時間には、右サイド(岡山視点)から攻めようとする動きに対して、快速を活かした切れ味鋭い仕掛け、クロスを何度も配給。岡山に盛り返された時間帯は、疲労もあって、やや勢いこそ失ったが、この試合で、個人的に最も印象に残った選手。


8、守備スタッツ(選手個人)


守備スタッツ - ミッチェル デューク

15デュークの守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(15ミッチェルデューク)

ファウルの多さが、この試合の難しさを物語っている。山口サイドのボールロストを確認して頂けるとよくわかると思うが、前線からハイプレスの連続した守備で奪い取るという攻撃は、4-4-2では、ほぼできなかった。そういった中で、自陣に戻っての守備や、球離れの早い山口のパス回しの前に遅れてしまうことが多くなってしまう事が良く分かるデータとなってしまった。


守備スタッツ - 河野 諒祐

16河野の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(16河野 諒祐)

守備より攻撃時の16河野 諒祐を岡山としては、増やしたいが、山口のストロングポイントであり、ホットゾーンであるここでの攻防が多くなったことで、前半は、守備に追われることが多くなってしまった。また、確実性のあるプレーや粘り強い守備というよりは、局面を打開するプレーや意表を突くプレー、奪い取ってしまおうというプレーを選択しがちという事もあり、岡山サイドのボールロスト図が示す通り、ここから山口のサイド攻略を糸口を与えてしまった。


守備スタッツ - 佐野 航大

22佐野の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(22佐野 航大)

岡山の16河野 諒祐を巡る攻防を岡山サイドも22佐野 航大を中心に繰り広げられた。仕掛けて奪われても取り戻す動き、戻って守備する動きができる。巧い選手は、守備が不得意な傾向にあるが、米子北高等学校では、ボランチでプレーした事もあり、守備も彼の武器でもある。ここ数試合では、トップ下やSHでの出場機会が増えて行く中で、守備面での貢献度がより目立つ様になってきた。今回のデータは、攻守でイニシアチブを握れる可能性を高めることができることを再確認できたデータ。


守備スタッツ - ヨルディ バイス

23バイスの守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(23ヨルディ・バイス)

主に左サイドから攻められることが多かったことから23ヨルディ・バイスのクロスに対する守備機会はとても多くなった。グラウンダーのクロスもある中で、1対1で対応することが多かった5柳 育崇や16河野 諒祐の攻防の動向に注視しつつ、26本山 遥、41徳元 悠平、35堀田 大暉と巧く連携しつつ、ギリギリの所で対応してきたこを示すデータ。それでも10回に迫る8回のクリアは、チームを救った。


守備スタッツ - 前 貴之

15前の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(15前 貴之)

CB並みの驚異的な守備スタッツを記録。ブロック0が示す通り、表立って攻守でプレーするのではなく、フォローすることを意識していた事を証明するこぼれ球奪取数での7回を記録。また、全体的なスタッツの記録が高くなっている事は、山口が力を入れているのは、中盤での攻防であることを示すデータ。ハイラインの維持を可能とする守備スタイルと素早く前線に運ぶ攻撃の構築力は、DFラインと中盤、前線と中盤。このポジションの関係性を自然体でできる事にあると、良く分かるデータ。


守備スタッツ - 高橋 秀典

27高橋の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(27高橋 秀典)

174センチとCBとしては、決して高いと言えない、むしろ低い身長ではあるが、クリア数4回も記録。ハイラインとなる時間帯もある中で、足下の技術やスピード、運動量などの心身で高い力を持った選手であることが分かると同時に、山口のSB兼任することもあった3バックの難しさを同時に感じた。


守備スタッツ - 梅木 翼

49梅木の守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


守備スタッツのポイント(49梅木 翼)

最前線のCFながら、一定の守備機会のあった49梅木 翼。考えられるのは2つのケースである。セットプレーの高身長を活かしたクリアでの貢献。もう一つは、PA付近へのクロスの毀れ球に対する守備機会である。左サイドの41桑原 海人から再三クロスが配給されており、そういったシーンがあると考えにいたる事も自然である。


9、GKスタッツ(選手個人)


GKスタッツ - 堀田 大暉

35堀田のGKスタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


GKスタッツのポイント(35堀田 大暉)

チームを救うビックセーブが減って来たのも事実ではあるが、ミスの少ないGKで、野球で例えるのリズムの良いピッチャー。フィードやゴールキックが割る事も少なく、アジリティもあり、プレスを受けても焦らずフェイントでいなす技術と大胆さがある。この試合でもその落ち着きで、高いパス成功率を記録。このスタッツには載っていないが、PA内に出て守備するシーンも何度もあり、チームを救った。ポープ・ウィリアム、一森 純、梅田 透吾、35堀田 大暉と総合力の高いGKが近年正守護神を任されており、この試合でもバランスの良いスタッツであった。


GKスタッツ - 寺門 陸

31寺門のGKスタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


GKスタッツのポイント(31寺門 陸)

19歳というとても若いGK。身長も179センチとGKとしては低めである。被シュートの総数は12本。その内8本が枠内シュートである。PKの2本は、防ぐのが難しいとしても、CBの攻撃参加からの強烈なシュートなど、迫力のある攻撃が有った中で、しっかりキャッチできる握力の強さやシュートへの反応速度も速く、35堀田 大暉同様にハイラインの裏をケアをして高いポジションを取っても素早くポジション取りができて、飛び出す事ができる。一度連係ミスこそあったが、岡山の35堀田 大暉と似たタイプのGKであり、高いパス成功率が高いことも考えても現代的なGKの1人と言える。


10、ヒートマップ(選手個人)


ヒートマップ - ミッチェル デューク

15デュークのヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(15ミッチェル・デューク)

FWである15ミッチェル・デュークが、献身的な守備をする選手であるとはいえFWであるにも関わらず、これだけ低い位置のプレーが多くなっている事からも苦しかった前半が難しいゲーム内容であったことが分かる。


ヒートマップ - 河野 諒祐

16河野のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(16河野 諒祐)

彼に多い縦に細長くなるヒートマップが上手く機能している試合だが、この試合は自陣深くに押し込まれている時間帯が長かったことが良く分かる。加えて自陣にPA内の方にも引っ張られており、守備機会が多かった事も分かる。


ヒートマップ - 佐野 航大

22佐野のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(22佐野 航大)

パスの得意な選手は、スルーパスの狙える中で巧く受けようとするが、22佐野 航大は、

トラップする段階から意表を突いて、振り切ることと、そこからドリブルで抜くプレーもでき、多少体を寄せられても奪われないボールコントロールと体の使い方で、巧くキープすることもできる。外から中に入っていけることで、前線における幅を作り、攻撃時のパスの有効なターゲットになりえていることが良く分かるデータ。パス数もチームとしては高めとなっていて、中盤と前線を繋げるキープレイヤーになりつつある。


ヒートマップ - ヨルディ バイス

23バイスのヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(23ヨルディ・バイス)

試合を重ねて行く中で、お互いの特徴を理解し、お互いに活かすプレーできる回数が増えてきた中で、CBながら攻撃参加できてシュートまで行けるシーンも増えてきた。そういった兆候がはっきり出ているのが、この縦に長いデータといえる。もちろん、押し込まれた時間と押し返した時間があった中で、隙があればボールを持ちあがるプレー、高いポジションをどりをする場面も増えてきただけでなく、積極的に前に出て守備するプレーも増えてきたことを示すデータ。


ヒートマップ - 仙波 大志

44仙波のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(44仙波 大志)

ほぼ22佐野 航大と重なるヒートマップ。お互いが近くプレーしたいと思えるプレースタイルであることが分かる。パスが欲しいところを察知する視野の広さと、そこにパスを出せる技術、また隙を探す嗅覚を兼ね備えた二人が、近づくのは、自然の流れかもしれない。38永井 龍がここにより絡めるようになると、より良い攻撃ができるそうである。


ヒートマップ - 菊地 光将

2菊池のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(2菊池 光将)

ハーフウェーラインに迫るヒートマップ。押し込む力と前でプレーするデータをここまで色々と紹介してきたが、このデータもその一つと言える。相方のCB(3バックだが、攻撃時は4バックになるのその時にCBのポジションを取る6渡部 博文)も似たヒートマップとなっている。また、この図を見ても、パスを受ける・パスを出すために細かいポジションチェンジや幅広い範囲をケアするため、走行距離が長くなる傾向にあることを示すデータでもある。


ヒートマップ - 佐藤 謙介

8佐藤のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(8佐藤 謙介)

主に攻撃面で、左右でバランスよくプレーしている。この結果平均ポジションが、ど真ん中になる時間帯もあった。パスの受け手として、出し手として、左右どちらかを選択し、前線まで運ぶサポートやシュートアシストも多く記録し、山口の攻撃を牽引していた事を裏付ける事ができるヒートマップと言える。


ヒートマップ - 前 貴之

15前のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(15前 貴之)

フォローに徹しているのではないかという説より裏付けることが可能であるボールタッチが、全体に分布したデータであった。また、左サイドの方、ヒートマップが濃くなっていることからも、左サイドの方が上手く機能していて、攻撃中心だった事も示すデータとも言える。


ヒートマップ - 兒玉 澪王斗

30児玉のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(30児玉 澪王斗)

右サイドで高い位置で、濃くなっているにも関わらず、岡山の左SB41徳元 悠平と、山口の右WBである30児玉 澪王斗の攻守の個人スタッツが伸びていない事からも、岡山は巧く守れていて、山口は攻めあぐねていたことが良く分かるデータ。右CB兼右SBの27高橋 秀典も、その後方のカバーやフォローできているヒートマップであったことからも、よりこの推察の正当性を担保できるものとなっている。


ヒートマップ - 桑原 海人

41桑原のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(41桑原 海人)

良い時の16河野 諒祐もこういったヒートマップになることが多い。それだけに90分で考えると、山口の方がこのサイドの主導権を握った時間が長かった事を示すデータである。それにしても高い位置でのボールタッチや回数が多くなっている。スピードがあるだけにスタミナの消耗も激しいと思うが、それでも90分間攻守で走り切ったスタミナは、素晴らしい。


ヒートマップ - 梅木 翼

49梅木のヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


ヒートマップのポイント(49梅木 翼)

ボールタッチ数こそ多くないが、チーム全体でのプレー機会の割合に応じたエリアで、濃くなっている。この事から前線に張り付くのではなく、チームの中心や重心がどこにあるか把握し、状況に応じて、チームとして良い距離感を保つことで、素早い前線(特にサイド)へ運ぶポゼッションサッカーを可能としている。他の選手を各種データを見ても、チーム全体の距離感を意識することが、山口のサッカーには、必用不可欠であることが良く分かった。


11、総括


 ここまでSPORTERIA様が提供して下さっている全てのデータを独自に分析、解釈し、推察してきたが、各データを見た上で、この試合が、どういった試合で、どう試合を左右をしたかという結論に入りたい。


 岡山のサッカーである前から人数をかけた守備強度の高いハイプレスをほぼ完璧に封じていた山口。岡山は、もともとロングパス比率が高いチームとはいえ、中盤や前線で、ボールを奪えないことで、奪ってからのショートカウンターや密集地帯で打開する14田中 雄大や27河井 陽介といった選手が、なかなかボール関与できない時間帯が長くなった。


 この結果、そのスタイルで、高い位置でボールを受ける事ができていた16河野 諒祐がなかなか高い位置でボールを触ることができなかった。逆にスピードと突破力のある41桑原 海人が、躍動。中には中心FWである49梅木 翼が待っていたが、対人守備の強い23ヨルディ・バイスが驚異のクリア数が8回記録した通り、クロスに対して、しっかり対応できた事で、流れからの失点は、防ぐ事ができた。


 ただ、岡山の武器である奪ってからのショートカウンターと右サイドの16河野 諒祐からのクロスやラストパスがなかったことで、岡山からの流れからの攻撃できる回数は限られていて、前半は、ほぼ山口のやりたいサッカーを展開されてしまう結果となり、被シュートが岡山は多くなってしまった。


 その中で、繋ぐことや中盤を経由した攻撃を無理に行わず、ロングパスを多めに使って行くという形の攻撃を採用し、辛抱して蹴らされる場面こそあったが、ここも実は、岡山の武器なので、ここだけは、しっかり狙って行こうという意識の下、山口独自のハイラインとボールを保持するポゼッションサッカーに、縦に素早く運ぶカウンターのスピードと、サイドから得点を狙うサイド攻撃の2戦術の良さの良い所を取り入れた山口独自のサッカースタイルで、例えるなら『保持型サイドカウンター』を受けて立った岡山。


 山口としては、やりたいサッカーができていたが、先制したのは、岡山であった。プレビューで指摘したPA内への進入を許す回数が多いというデータ通り、力技で入っていけるストライカー2選手、セットプレーに強い選手が多いこともあって、セットプレーで思わず手を当てしまったハンドで、PK献上し、それを決められて失点。二つ目は、ハイラインのちょっとした隙を突かれたのカウンターからの突破を許し、不利な場面になったことで、審判が笛を吹いてしまいそうなシーンを作られてしまったことで、再びPKを得て、思わぬ形だが、データとして起こり得る形での2点差リードに成功した。


 ただ、やりたいサッカーが出来ていて主導権を握ているのは、山口であったので、押し込む事で得たPKと、ハイプレスをいなす力を得たパス回しで、ファールを誘発して得たFKを確実にものにできたことで、前半は、2-2で終えることができた。


 岡山側としては、自分達のサッカーがかなり制限された中で、同点で折り返せたことは大きかった。山口側としては、リードして終えたかった前半であった。


 後半の岡山は、3バックで勝負する時間に備えて、全体のバランスを意識して後半の最初の15分を凌ぐと、3バックシステムにシフト。すると、山口優位から岡山の優位へと流れは、一気に変わった。後半の15~45分の間における岡山の平均ポジションは、ハーフウェーラインよりほぼ前に位置することとなった。


 これは、山口が優位性を得ていたはずの中盤で、岡山の人数が増えた事と、左サイドの裏を狙って、そこから仕掛けていたサイド攻撃も3バックになったことで、サイドのスペースが狭くなっただけではなく、16河野 諒祐が一つ前が基本ポジションになったことで、岡山が、そこで優位な状況、もしくは五分の状況にできたからである。


 また、後半からロングスローを採用して、セットプレーの圧力を強めるだけではなく、22佐野 航大と16河野 諒祐の精度の高いクロスやラストパスを配給できる二人により、両サイドから攻撃が活性化。守備に奔走するディフェンシブエースである15ミッチェル・デュークから動きが岡山で、最もストライカーらしい38永井 龍にライン駆け引きさせることで、山口のDFラインへの圧力をかけて、中盤とDFの連携を揺さぶりをかけることもできた。


 岡山が、山口の良さをシステム変更とメンバー変更により打ち消したことで、山口が浮ついたところを岡山の武器であるセットプレーでの勝ち越しゴールを決める事に成功した。


 ビハインドになった山口サイドが、保持型サイドカウンターを仕掛けたくても前線にスペースが生じ辛い状況になった上に、パスコースを探る時に、そこに時間をかけると中盤の選手が、ここぞとばかりにハイプレスをかけてくる。その結果、終盤に見られた、山口サイドの高い位置でのボールロストから、岡山にショートカウンター食らうというシーンが生まれた原因がある。


 メンバー変更や岡山の戦い方に対応して行く中で、シュートまで行くシーンを作る事ができたが、後半のシュート数は、岡山の方が多く、同点に追いつきたい山口側が、逆に攻められるシーンが、何度も起きた。


 結局、データで見ると、後半の15~45分の間、岡山が山口陣地でプレーした時間が長かったのに対し、山口は、チームとしての距離感の修正とサッカーの立て直しまでは至ったものの、岡山陣地まで素早く運んで、サイドから猛攻を仕掛けるという形勢までは流石に押し戻せなかった。


 山口は、シュート数の総数で岡山を上回り、主導権を握る時間帯は、岡山より長かった通り、組織で岡山に勝っていたが、数的優位を作れないセットプレーの守備でのPKと、囲い込む守備と、スペースを消す守備ではなく、対人守備が求められる守備のシーンを作られてしまった所、PKを二回献上することとなったように、個で組織の隙を突かれて失点してしまった。


 山口が個でも上回った2菊池 光将の高い打点とそこにピンポイント合わすスペシャルなキッカーの8佐藤 謙介のキックや、サイドを搔き乱すサイドアタッカーである41桑原 海人が、存分に仕事こそしたが、組織的優位を活かせなかったことで、岡山が僅かに山口を上回ったことで、勝ち点3を手にすことができた試合と言える。


 組織を個で無力化し、個を組織で無力化する。そういった試合であった。そのハイレベルな攻防の中で、両チームの特性とゲームプランを駆使した極限の攻防の末に、勝敗は決した。この試合で、組織の熟成度を高める必要性を感じた岡山であったが、個の力に自信を持つことができた。また、3バックに変更した時の組織的優位性にかなりの手応えを感じた試合にできた。


 この激闘を制したことで、岡山は、上位との勝ち点差を更に詰める事に成功したが、まだまだJ1は遠く、更なる成長が求められる。結果と前進を如何に可能とするのか、難しい舵取りが求められていることは間違いない。


 惜しくも敗れた山口もボールロスト時の中央とディフェンシブサードのボールロストの少ないサッカーができる数少ないチームであり、このサッカーを突き詰めた時にどういったサッカーを展開していくのか、個人的には楽しみに感じたし、このデータでフォーカスし、分析することで、改めてその凄さを感じる事ができた。


 内容で勝敗を決定するのであれば、山口に軍配の試合であった。岡山サポーターではあるが、そのサッカーをアウェーの試合で、やってのけた山口には、最大級の賛辞を送りたい。そして、岡山の地まで遠征して下さった山口に関係するすべての方には感謝の気持ちでいっぱいである。


 毎試合素晴らしい攻防があるJリーグの試合、歓喜と共に消耗の激しさも同時に感じている。お互いの立ち位置と現段階での目標こそ違うものの、お互いに強さを求め、上を目指す中国地方のクラブとして上を目指す喜怒哀楽をこれからも山口と共有できる関係であり続けることを願い本レビューを締めたい。


 最後まで読んで下さり有難うございました。


文章・図=杉野 雅昭(text・igure=Masaaki Sugino)、図(figure)=SPORTERIA様

※注釈:私の図は1点のみです。※


私の別のレビューももし良ければ、一読頂けると嬉しいです。こちらが最後の総括の一部を除いて、冷静の客観性重視のレビューであれば、下記のレビューは、気持ちを前面に出した熱のレビューです。どちらも試合に関係する全ての方にはもちろん、サッカーへの最大限への敬意を払ってのレビューである点は、共通しています。


2022ファジアーノ岡山にフォーカス26 岡山 vs 山口「幕開けの雷光」

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