1、いわき戦の可視化のテーマ


 今節は、終了間際まで、強固な守備ブロックを構築し、いわきFCの枠内シュートを防いできたゲームであった中で、急転直下の引き分けとなってしまいましたが、24シーズンの木山ファジが、スタイルの部分で、どこまで力を入れているのか。多くのレビュアーさんの記事を観た中での新たな視点なども考察に入れながら、今節の引き分けの気になったデータをみていきたい。


基本情報図:図=figure:杉野 雅昭(Masaaki Sugino)


2、負けに等しい衝撃


 負けてはいなですが、データ的に競馬例えると、最後に刺されて抜かれたみたいなデータがはっきり出てしまったのが、このデータ。良く見ると…


ゴール期待値

ゴール期待値(図=figure:SPORTERIA提供)


 この試合を語るには、これが一番分かり易いかなと。前回は、最後に紹介しましたが、今回は、ここが結論じゃなくて、このデータでも分かる岡山の頑張りやスタイルに言及していくというのがテーマです。


 観ての通り、風上でもゴール期待値上は、優位をあまり前面に出せなかった。前半の最後にセットプレーの18田上 大地 選手が最後触った地点の数値だから爆上がりしてますが、岡山の苦心とミラーゲームの難しさがそのまま出てしまった感じです。


 本当に最後の1プレーまでという内容がゴール期待値でもでてしまいましたね。


 この岡山のこの試合の粘りと2節戦った中での木山ファジのスタイルに関するデータをこれから探していきましょう。


2、プレー強度が求められたミラーゲーム


パスソナー・パスネットワークパスソナー・パスネットワーク

パスソナー・パスネットワーク(図=figure:SPORTERIA提供)


 見ての通り、岡山の18田上 大地 選手が、退場した事と風の影響があった事で、岡山のパス成功数が、かなり厳しい数値になっています。どうしても前に蹴って「跳ね返す」ことでの逃げ切りの選択したことで、パスの成功数が下がって、こういったサッカーになってしまうのは、ある程度仕方ないかなと思います。


3、コンパクトと割り切り


 いつもだと、15分刻みで言及することが多いデータですが、今回は、「風上の時間」と「風下で退場後」という基準でみていきましょうか。


時間帯別パスネットワーク図

岡山:時間帯別パスネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


・風上の前半


 9グレイソン選手をシンプルに使う中で、ハイラインで、コンパクトの状態で戦えていた事が分かります。今季は、スピードと運動量、予測に優れるDFラインとWBの強みを全面に出した戦い方だからこそできる戦い方かなと感じます。


・風下の後半(後半20分にぐらいに18田上選手退場)


 どうやら前半以上の強風だったようですが、後方と前方でかなり分断されています。人数も少ないですし、割り切って戦った感じですね。ある程度、跳ね返すという戦い方を選択肢してましたが、前に大きく出す事はできませんでしたが、しっかり跳ね返すこと自体はできていたと思います。

 本当に最後のプレーが悔やまれますね。ショッキングな引き分けですが、チームとして堅守岡山という事を内外に示せたんじゃないかなと思います。


時間帯別パスネットワーク図

いわきFC:時間帯別パスソナーネットワーク図(図=figure:SPORTERIA提供)


 図をみていると、両チームの分布図が近く、いわきのスタイルと岡山のスタイルの双方に似た部分があったのかなと感じます。雉球さんもゼロファジもそこを指摘されてましたし、ミラーゲームで、ロングパス主体で、フィジカルで勝負していくという部分は、例年以上にそこである程度戦えていましたし、今季の岡山の武器の1つにもなるかなとと感じます。


 この試合では、岡山の風上の時間でもシュートまで行かれてましたし、攻撃の時にいわきFCの選手のスピード感のある仕掛けというのは、90分間脅威でしたが、シュートまで行かれてもしっかりブロックしていくという事は、岡山はできてたんじゃないかなと思います。


 そこは、岡山の守備時のシュートブロックは、岡山の新た武器だと思いますし、人数少なくなった中での、ロングパス主体のいわきFCの攻撃は、岡山としては、逆に守り易かったという他のレビュアーさんも感じられていて、私自身も耐えきれそうと安心感はある程度、感じていて、多くの方もほぼ勝利を確信していただけに、ショッキングに感じたんだろうなとは感じます。


 次は、その「シュートブロック」について深掘りしていきましょうか。


4、岡山の新武器「シュートブロック」


 まずは、49スベンド・ブローダーセン 選手の個人スタッツを見てみて下さい。


GKスタッツ - スベンド ブローダーセン

49スベンド・ブローダーセン 選手:個人スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 被枠内シュート7本でも、失点1、シュートセーブ0。これが意味する事は、岡山の選手が、しっかりシュートを打つ選手に対して、寄せに行って体でブロックできていることが分かります。


 最後のシーンでこそ決められていましたが、怖いと感じるシーン自体は少なかった。危険なシーンは本当に数シーンぐらいで、その中の2シーンで、18田上 大地 選手が退場して、同点に追いつかれる失点を喫してしまったわけで、サッカーの怖さを感じます。


 さて、そのシュートなんですが、いわきFCは、中央ではなく、サイドのスペースを狙う形を徹底していました。この試合で、押し込めていた前節と違い、戻って対応する岡山の左右WBか左右のCBが対応するシーンが、多かったですよね。


エリア間パス図


いわきFC:エリア間パス図(図=figure:SPORTERIA提供)


 見ての通り、いわきFCは、岡山より人数が多くても左右のサイドのスペースを狙うというの形を徹底して続けていました。当然シュートというシーンでも中央寄りもサイド寄りが多くなる。そういった時に左右のCBのシュートブロックは伸びます。


守備スタッツ - 鈴木 喜丈守備スタッツ - 阿部 海大

左CB 43鈴木 喜丈 選手&右CB 4阿部 海大 選手:守備スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 これが、岡山の新しい守備の堅さというか、失点の確率を下げる術を持っているという岡山の強みではないかと感じますね。ブロックもクリアも高い数値ですし、4阿部 海大 選手は、こぼれ球奪取数も高いですね。


 ただ、栃木もいわきFCも直接的な攻撃が主体であるので、組織的なパスワークができるチーム相手にどれだけ堅守を構築できるかは、今後注目してていきたいポイントではあります。



5、「繋ぐ」ビルドアップは準備中?


 岡山の攻撃の中心にいたのは、この試合でも9グレイソン選手でした。


攻撃スタッツ - グレイソン

9グレイソン選手:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ラストパスもアシストももっと記録しても良かった活躍でした。SNSで、夏場での引き抜きが心配する声が既に多くのファジアーノ岡山サポーターから出ています。


攻撃スタッツ - 岩渕 弘人

19岩渕 弘人 選手:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ヒーローになっていても不思議ではなかった。次節以降の爆発に期待したい。27木村 太哉 選手もこの試合では、なかなか絡めなかった。だからこそ、3トップの3人には、より期待がかかる


 9グレイソン選手軸の攻撃が良いからこそ、どうしても次の18田上 大地 選手の数値が示すようなサッカーになってしまう。


攻撃スタッツ - 田上 大地

18田上 大地 選手:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 パス成功数(が低いこと)を見ても、ロングパスの意識が非常に高かった事が分かりますね。チームとして後ろから繋いで行く意識の優先度が現状は高くないとみて問題ないのではないかと思います。


 今季は、前から来たらシンプルに9グレイソン 選手が機能している分、そこをシンプルに使うという点を共有できていることもあって、ロングパス比率は高くなっている。


 繋ぐ事で、被守備機会を減らす戦い方もできるが、9グレイソン 選手に当てて、ポストプレーで19岩渕 弘人 選手や27木村 太哉 選手を使う攻撃や、ネガティブトランジション(攻撃→守備の切り替え)での即時奪回やセカンドボールを回収した攻撃回数も少なくなってしまう。


 そう考えると、やっぱりロングパス主体となるのかなと感じます。そのサッカーで、守備に特徴のある24藤田息吹 選手だけではなく、相方の14田部井 涼 選手の両選手の2次攻撃を含めて、ハードワークとチャンスメークで、攻守で大車輪の活躍をしています。


ヒートマップ - 田部井 涼ヒートマップ - 藤田 息吹

14田部井 涼 選手&24藤田 息吹 選手:ヒートマップ(図=figure:SPORTERIA提供)


 両選手ともピッチで色んな所でのタッチ機会がある。攻守での存在感が際立っている。この2人がいれば、ある程度中盤で繋ぐという事もできそうに感じます。25吉尾 虹樹 選手をリザーブメンバーに入れてましたし、もしかすると、ボランチの2人とシャドーを繋ぐサッカーのイメージもあったかもしれないですね。


攻撃スタッツ - 田部井 涼

14田部井 涼 選手:攻撃スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 岡山の選手のパス成功率が、軒並み低くなる中で、この数値。ゼロファジさんもMOMに推されていました。私は、10番の選手が変わったシーズンは、10番のユニフォームを作ると決めていますが、恐らくそのシーズンでなければ、14田部井 涼 選手のユニフォームを作りたいぐらい期待していたので、ここまでの2試合での活躍は嬉しいです。


 さて、ここまでの流れが示す通り、9グレイソン 選手を軸に攻撃を組み立てていて、その攻撃がJ2で反則レベルで機能している以上、後から繋いで行くサッカーというのは、当面はやらないんじゃないかと感じます。


 同時に、雉球さんが、指摘されていた「風下の影響が強すぎたので人数少なくても繋いで欲しかった」という点。そこを選ばなかった事からももしかすると、チームの中で、こういった苦しい時に繋げるだけの安心感というか安定感というのが、今のチームには、まだまだ可能性もあるのではないかとも感じます。


 そういった練習もしてるかもしれませんが、チームの戦術練習で、その部分にどこまで力を入れて、どこまでの完成度があるのか。現状は、ある程度、ロングパスやミドルパスを選択することへの抵抗はかなり低いのではないかと感じています。


 ただ、こういった前に運べない時の手段として、持っておきたいオプションだと思うので、どこまでの完成度を今のチームの中で、できているかは、気になりますね。


 私を含めて、多くの方が、ある程度「繋ぐ」サッカーを継続するイメージがあった中で、開幕して2試合消化してみて、思った以上に長めのパスを採用しているなと感じている方は多いのではないかと思います。


 繋げないことはないと思いますし、ここにどれだけ注視していくのか、もしくは、解禁していくのかはというのは、気になりますね。


6、総括


基本スタッツ

基本スタッツ(図=figure:SPORTERIA提供)


 ただまぁ、35分間ぐらい1人少ない中で、これぐらいの差のスタッツで戦えた岡山は、対空に対するDFラインの跳ね返す力というのは、中盤の運動量や回収率を考えても岡山の強さを感じるところではあります。


 まだまだチームとして、99ルカオ 選手や29斉藤 恵太 選手を巧く活かせてない部分はあるのですが、その辺りは、今後の課題かなと感じます。次節18田上 大地 選手が、不在の中で、戦わないといけないのは辛いですが、ルヴァンカップで、今季の岡山強しみたいなサッカーで、もう一度エンジンをかけて欲しいなと思います。


 今回データで紹介してきた「シュートブロック数」を武器の後ろに49スベンド・ブローダーセン 選手が控えているんですよね。もしかすると、今季の最少失点を狙える堅守を構築できるのではないかと期待しています。


 となると、後は、どれだけ得点できるかではないかと思います。今日は、決まりませんでしたが、木山ファジの中で最も決定機ができてますし、チームとして成熟して行く中で、今出場機会のない選手、8ガブリエル・シャビエル 選手や新人の11太田 龍之介 選手とか、中盤でも6輪笠 祐士 選手や新人の25吉尾 虹樹 選手とか、楽しみな選手はいっぱいいますよね。


文章・図(基本情報)=杉野 雅昭

text・figure=Masaaki Sugino

図=figure:SPORTERIA提供


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