ミッドウィークに予定されていたルヴァンカップグループステージ第1節アウェイ大分戦が延期となったことで鹿島は前節から1W 開き、対する川崎はACL の兼ね合いでミッドウィークにJ1 リーグ第9 節横浜FM 戦を消化しており、条件としては鹿島有利となっていた。

鹿島は第1 節アウェイG 大阪戦で相手の退場による数的優位の中で勝利しており、川崎は横浜FM に打ち合いの中2-4 で敗れていることもあり、戦前は何とか打倒川崎を目指すために前向きな空気をファン・サポーターからも感じられていた。かく言う自分もそのひとりだった。第1 節に続きDAZN 観戦。


メンバー

フォーメーション図フォーメーション図

先発メンバーは前節と同じとなった鹿島。前節G 大阪戦で脳震盪も心配された関川も名を連ねる。

4-3-3 の川崎に対して攻撃ではアンカーの左右をどれほど使えるか、守備では相手3 トップ+2 インサイドハーフを最終ラインの4 人+2 ボランチでどのように守るのか、という基本的なポイントを岩政コーチがどのように作ってくるのかという点も注目ポイントとなった。


所感

試合開始直後に樋口から戻したボールを関川が相手に攫われてあっさり失点。樋口は縦位置の関川にショートパスを戻すと自身は関川の斜めに開くことはなく、左サイド側(斜め前にピトゥカ、横位置にミンテ)につなぐようジェスチャー。しかし関川は受けたボールを縦関係の樋口にそのまま戻してしまい、インターセプトされてしまった。樋口が関川にボールを戻した後に関川の斜め右側に開くポジショニングを取っていればインターセプトはなかった場面だが、ここでなぜ樋口がそうしなかったかというのは、関川からピトゥカにつないだ次にピトゥカからのボールを受けられる位置を取ろうと考えていたのはないかと思う。このような樋口の動きは今シーズンの鹿島に見えつつある光明なのではないかと多くのファンが期待している中、ここでは関川のプレーだがサッカーの原則のところがチーム全体に徹底されている段階にはまだ到達していないということを改めて思い知らされた。

サッカーのプレー自体以外のところでもうひとつ。岩政コーチの試合後コメントの通り、このミス自体はそれほど大きく捉える必要のないものだったと思うが、関川を始めとしてチーム全体の士気が相当下がっているように画面上からも見受けられた。特に気落ちしていたように見えた最終ラインは小さいプレーに終始し、ビルドアップは周りを見てから常に隣の味方にショートパスを出すことしかできていなかった。テンポが早いわけでもなく、一本で局面を打開できるような展開的なパスでもなく、必然的に川崎の前からのプレスをまともに受けてしまい、ビルドアップの出口にすら到達できない局面で前半を浪費してしまった。思い通りにいかない中で試合中にピッチ内でどのように修正していけるのかというPSM からの懸念が第2 節で早くも露呈してしまった形となった。


後半から、関川に代えて三竿をCB に、土井に代えて中村を投入してから一気に試合の趨勢が変わっていく。三竿が入ることで闘う意識がチーム全体にやっと出てきたように思う。本来は打倒川崎を有利な条件でホームでチャレンジできるという勢いを試合開始から出していかなければいけなかったのではないか。最低限それができなくてはサッカーの戦術・技術で勝負する前の段階にも到達できないと思う。

中村を投入し、中盤4 枚をボックス型からダイヤモンド型に変更。中村がアンカー、樋口とピトゥカがIH、荒木がトップ下という構成になり、川崎の3 トップ+2 IH に対して最終ライン+アンカーの5 人で噛み合う形となったことで明確な守備ができるようになり、攻撃の組み立てのところではピトゥカと樋口が他の味方と常に斜めのポジションでパスを受けやすく出しやすい形となっていた。

中盤の形を変えたことで試合をうまく進めやすくなったのは相手システムとの噛み合わせや合理的なパスルートを作りやすいという戦術的な部分もあると思うが、何より大きいのは選手ひとりひとりが迷わずにプレーできるマインドにそれぞれなれたことではないかと思わされる。

J2 甲府から移籍してきた中村はこれがJ1 デビューとなったが、思った以上に良いパフォーマンスを見せてくれたと感じたファン・サポーターが多かったのではないか。良いパスで攻撃を組み立てる最大の特徴もよく見られたし、タイプ的に少し懸念していたアンカーでの守備のところも球際に激しく行って相手ボールを奪いきるシーンが何度も見られた。彼の試合後のコメントからは、失うものはないので思い切り行くしかなかった。という良い意味で吹っ切れた状態であったことが伺え、好パフォーマンスの最大の要因であったように思われる。


時間帯別パスネットワークを見ると、前半は後めから対角線へのフィード、というキャンプでよく見られた形はなく、常に近くの相手へのショートパスであったことがわかる。

後半は少し持ち直してチャレンジのパスやチームとして狙っていく形をようやく出せた、というデータに見える。

時間帯別パスネットワーク図


ゴール期待値のグラフは鹿島の選手たちのプレーから見える熱量を表しているように見える。

ゴール期待値


11 人の選手がピッチ内でどれだけ迷わずプレーできるのか。これを突き詰めていかないことには試合に勝てるチームにはなれないと思う。PSM レビューでも書いた通り、昨年からも勝てない試合の相手を見ていてもよくわかる。


リンク

公式試合レポート

ハイライト: https://www.youtube.com/watch?v=zjb1OP2Iblw