リーグ戦3 連勝、ルヴァンカップグループステージを含めると2 戦連続逆転勝利で結果が出ている鹿島。結果が出ているとはいえ、先制点を許す試合が続いているところは懸念点。特に早い時間帯での失点傾向があり、試合の入りを大切にしたい。

対する清水はリーグ戦1 勝利と波に乗れていないが、直近のルヴァンカップグループステージでは広島に2-1 で勝利しており、油断はできないところ。

今節もDAZN 観戦。本当は毎週現地観戦したいところだが、中々、、

前節までの対戦成績

時間帯別得失点率


メンバー

フォーメーション図フォーメーション図

鹿島はA 代表の上田、U21 代表の荒木・松村がいずれもベンチスタート。中盤は若干の怪我から復帰したピトゥカと樋口のダブルボランチ、LSH 仲間、RSH 和泉、トップ下気味にファン・アラーノが起用された。2 列目はランプレーヤーを揃え、レネ・ヴァイラー監督の志向が垣間見える。今節メンバー外となった土居、代表明けの3 人のコンディションが万全となったらどのようなアタッカーのセットとなるのか、今後も興味深く見ていきたい。


所感

前半、後方のビルドアップはほぼ選択せずにロングボールを鈴木に蹴り、落としを2 列目で回収して攻撃するシーンが目立っていた。

清水もベンジャミン コロリをターゲットに似通った狙いを持っていたように見える。ロングボールを収められていたのはコロリが鈴木を上回っていた印象だが、ポストプレーに2 列目が前向きに入っていく意識や成功率は鹿島の方が上回っていた。

パスソナー・パスネットワークパスソナー・パスネットワーク

鹿島の最終ライン4 人とも前方へのロングキックが第一選択肢であったことがパスソナーからはっきりと見てとれる。


鹿島の両SH、ボランチ、両SB は攻撃意識・高い位置でのプレスからの即時奪回の意識がかなり高く、厚みのある攻撃ができていたが、反面、カウンターを受けるシーンが何度も見られていた。鹿島としてはプラン通りの戦い方であることは間違いないと思うが、当然カウンターのリスクがつきまとう戦い方であるため、この戦い方をベースにするのであればリスク管理を今後より改善していくことがシーズンを通じて勝ち点を積み上げていくために必要である。特にCB の層が厚いわけではなく、質的優位性もさほど高いわけではないので、かなり重要な課題といえる。


ヒートマップ - 仲間 隼斗ヒートマップ - 和泉 竜司

ヒートマップ - 樋口 雄太ヒートマップ - ディエゴ ピトゥカ

SH、ボランチのヒートマップからは、ハイプレスの意識が見てとれる。


ヒートマップ - 安西 幸輝ヒートマップ - 常本 佳吾

元々鹿島として持っていた特徴であるが、両SB も高い位置を取って攻撃参加する回数は多かった。RSB 常本はおそらく自身の課題として攻撃というところを意識して取り組んでいるように見受けられるプレーが特に今シーズンはよく感じられる。シーズン当初はなかなかチャンスにつながるプレーが出ていなかったが、試合を経る毎に向上しているように見える。

攻撃スタッツ - 安西 幸輝攻撃スタッツ - 常本 佳吾

もともと攻撃をストロングポイントとして持つLSB 安西と比較してもスタッツ面でも遜色なく、この試合では数字以上に右サイドからの攻撃の方が左サイドからよりも得点の可能性を感じさせるものだった。クロスの精度、ドリブルでの仕掛け、パスワークなどなど、攻撃面の伸び代がまだまだ期待できる選手であり、これからのさらなる成長を期待したい。


試合展開は、基本的に鹿島が攻め込む時間が長くなったものの、清水も最後のところの守備は集中していて決定機はそれほど多くなかった印象。鹿島のハイプレスがひっくり返されて清水のカウンターとなる場面やロングボールをベンジャミン コロリが収めてからの攻撃では危ないシーンを作られていた。

基本スタッツ


前半から攻めてはいるが中々得点の可能性が高まらない展開が続いており、後半開始直後には縦に早い攻撃から鈴木がゴールネットを揺らすもののオフサイドでノーゴール。

このままの雰囲気でいけば0-0 もあるかと思っていた63 分、ピトゥカ->上田、仲間->松村の交代の場面でこの日のパフォーマンスもおそらく本人の思うように上がっていかず苛立っていたピトゥカがペットボトルをメインスタンド方向に蹴り込んでしまい、交代後の退場となってしまった。

これでチームの空気がさらに悪くなり、70 分には鹿島右サイドで松村が相手選手に寄せきれず上げられたクロスから動きの質でマーカーの安西を完全に出し抜いたベンジャミン コロリがヘディングで先制点を奪取する。守備対応がまずかった安西も問題だが、清水攻撃陣の中でもゴール前で最もストロングを持つであろうコロリに対して安西がクロスボールのマーカーとなる場面を作られたグループとしての守備にも問題があったのではないか。ともかく、ここ数試合の悪い流れである先に失点する展開が今節も繰り返され、この試合では先制点を取られた時間帯が70 分と、反撃のために残された時間が短く、チームの流れも良くない展開であったために、逆転勝利はかなり厳しいものと思われた。

ピトゥカが退いて以降、中盤は樋口アンカー、トップ下泉、LSH ファン・アラーノ、RSH 松村のダイヤモンド型に変更し前線を上田・鈴木の2 トップとしてなんとか追いつくための体制をとった鹿島。77 分にはファン・アラーノに代えてアルトゥール・カイキを投入すると、直後の78 分には松村からのクロスを斜め後ろに戻りながらの難しい体勢で鈴木がヘディングし、同点に追いつく。このシーンでは松村にボールが入ったところで右サイドの大外レーンを常本が追い越す動きをしたことによって、松村に相対していた守備者がマークの受け渡しの可能性を考えて詰めきれなかったことにも注目したい。得点に直接関わらないところだが、常本の好プレーといえる。

さらに89 分にはファン・アラーノ->荒木の交代を行い、荒木をトップ下に配置し、和泉をRSH に変更。すると93 分には関川からの鋭い縦パスを荒木が足下に見事にコントロールしてペナルティエリア右角あたりにいた鈴木にすばやく展開、鈴木のクロスを上田がこれも簡単ではないヘディングでヴァウドに競り勝ち決勝点。この得点もまさに縦に早い展開から生まれたものといえ、鹿島の最終ライン特にCB は試合を通じて狙っていた形であった。なかなか有効な縦パスが前方に届かないことが多かったが、このシーンの関川のパスは見事であった。アディショナルタイムでの逆転弾ということもそうだが、チームとして狙っているであろう攻撃の形から奪った得点であることも大きな意味を持つ得点となった。

鹿島としては攻め続けてもなかなか得点に結びつかない焦りもあったと思うが、清水もさすがに終盤は守備強度が落ちてきたこと、鹿島は自分たちから難しくしてしまった試合の流れの中でも最後まで諦めずに集中力を持ってプレーできたことがこの勝利につながったと感じる。シーズン当初は試合中に流れを取り戻す修正力が大きな課題として見受けられたが、ここ数試合の逆転劇を見ているとこの課題も徐々に克服できているのかもしれないと思わせる勝利となった。


次節はミッドウィーク、中3 日で迎える4/6(水) J1 第7 節アウェイ福岡戦。昨年のリーグ戦ではシーズンダブルを喫している相手である。特にホームで0-3 の敗戦となった第28 節は福岡がチーム一丸となって完遂してきた鹿島対策に成す術なく敗れた非常に印象深い試合であり、悪いイメージを一掃する試合としたいところ。


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データ


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