初めて投稿してみます。
※蛇足ですが、筆者は大分トリニータを2007年あたりから応援しており、文字通り酸いも甘いもたくさん味わってきたのですが、片野坂体制で夢のような時間を過ごすに連れて戦術的な部分に興味が湧き、仕事でも一部関わるようになっているような人です。
■試合概況
再開第一戦、そして大分のH開幕戦となったこの試合、戦術的な部分でも非常に見どころがありました。
大分はいつもの3-4-2-1で、4-1-5への可変を使いながらのビルドアップでサイドからの攻めを主体とするスタイル。
鳥栖は4-3-3で、前線3人のクオリティでタメとチャンスを生み出し、中盤がそこに関わっていくスタイル。
正直そこまでチャンスが多い試合ではなく、互いに中央が手薄になることが少ない硬い試合でした。
総合的なスタッツでも、両者に大差はなかった試合。
結果だけ見ると大分の完勝の試合、どこで明暗分かれたか。
それが、タイトルにもした「サイドの強度」だと踏んでいます。
これを両チームのサイドのキープレーヤーを中心に見ていきます。
■大分が押し込んだ右サイド、押し込めなかった左サイド
まずは、大分の右、鳥栖の左サイドから。
それぞれWB、WGと求められる役割は違いますが、それにしてもヒートマップの高さが違う。
特に小屋松はFWであるにも関わらず、これだけ低い位置になっており、かつ個人スタッツも絶対数が少ないことを見ると、かなり押し込まれていたことがわかります。
また、この試合でJデビューとなった特別指定の井上や、五輪代表候補の岩田は、その松本の攻め上がりを効果的にサポートしていることがわかります。
このサポートにより、鳥栖としてはSBの内田やIHの原川までも、このサイドの攻防にかなり巻き込んでいることからも、明らかに対応に苦慮したことがわかります。
では、次の大分の左、鳥栖の右サイド。
こちらのサイドは少し様相が変わります。
先ほどのサイドと比較すると香川はそれほど相手陣地に深く攻め込んでおらず、いっぽうでチアゴは大分陣地にしっかり鎮座していることがわかります。
これは一定ケアしつつも、チアゴとしてはある程度高い位置にい続けたこと、大分としても右サイドほど三竿や渡との関わり方から攻撃的にいけなかったことなどが相まって、結果的に逆サイドよりも鳥栖が優位にたったことが考えられます。
実際、チアゴのドリブルに大分陣形が崩されるシーンは何度かあり、最後の大分のカウンター局面を除けば、両チーム合わせても最も陣形崩壊をすることのできる要素がこのチアゴだったと思われます。
■明暗を分けたチアゴの交代
この試合、鳥栖がレンゾロペス→林大地、チアゴ→金森、と早めの手をうってきました。
レンゾロペスもポストプレーがそれなりに驚異があり、チアゴも先述のように怖い要素であったため、正直大分サポとしては助かった、と思った交代でした。
チアゴの抜けた左に積極的に抜けていったのは林大地。
しかし、そこへのサポートはそれほどなく(正直誰がチアゴのポジションに近いところに入ったか覚えていないくらい。)結果的に独力のためチアゴほどの怖さもなく、一方守備もさほどない、と大分左サイドの自由度が増した交代でした。
一方で、大分は田中が入ったことにより右サイドの組み立てにやや変化が出ます。
田中はいくつかポジションを変わったのでその影響も出ていますが、井上との違いはサイドではなくゴール方向にポジションをとっていること。
これにより大分は右サイドの強度をやや失ったものの(それでも松本-岩田で組み立てはできる)、PA内やバイタルでの強度が高められる結果に。
そして1点目は自由を得た左サイドのアーリークロスに、ゴール前で賢いポジション取りをした田中がヘディングゴール。
交代策の効果がロジカルに働いた結果であったように思えました。
■総評
その後、ポスト役に投入した伊佐を起点に、高木からスタートする(疑似)カウンターで2点目をゲット。
これは鳥栖がバランスを崩さざるを得なかったことを突いたもので、素晴らしいゴールではありますが、これは1点目が大きく影響していると言わざるを得ません。
互いにしっかりと守ったゲームでしたが、鳥栖の決定機は大分の自滅ミスやCKからで、やはり流れから決定機までいくところにやや課題があるか、という試合。
組み立てつつ、交代策も含めて相手のギャップをつく大分の戦術が、勝利の確率を確実に引き寄せた試合だったと思いました。
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