この試合、圧倒的にボールを支配し、左サイドを中心に攻撃を組み立てていた神戸。一方、横浜FCは自陣に引いて中央を固めるように守備ブロックを形成し、神戸の猛攻を最小失点で抑え、大きな勝ち点1を物にした。
ホームの神戸はACL水原戦から中3日でのJ1開幕戦となり、FWドウグラスやGK飯倉を温存しそれぞれFW藤本とGK前川を起用。また、前述の試合でフェルマーレンが負傷したため、開幕戦の出場は見送られたようだ。
対するアウェイ横浜FCは、16日のルヴァンカップでリザーブ組みを中心に広島と対戦。0-2で敗れ、下平監督自身も指摘しているビルドアップに課題を残したまま開幕戦を迎えた。この試合では、MF俊輔やDF伊野波、DFヨンアピンなどのベテラン勢も先発を飾っている。
試合序盤から横浜FCは、俊輔とFW一美が守備の時だけ横に並ぶような形で自陣中央で4-4-2の守備ブロックを形成。ボールを奪ったら、両ワイドのMF松尾とMF中山が一気にサイドに広がりショートカウンターを行っていた。
これに対し、神戸はMFサンペールをDFラインに下げ(ダウン3)、ボール保持で優位に立つ。中央は密集している為、空いているサイドのスペースにボールを運びながら相手ブロックを崩そうと試みる。
左サイドでは、DF豪徳やFW古橋の役割と関係性がはっきりしているため、被るような動きやポジションどりは少なくとても効果的に見える。また、後方でパスの出しどころが見つからない時の豪徳のランニングも見事だ。その判断力と、20~30mの距離を一瞬で詰めるスプリントはJ1でも類を見ない存在だろう。
だが、右サイドでは高い位置をとっているDF西にボールが入った時、MF郷家も同じようなラインの高さにいるため、対応するDFからすれば同じ視野でボールと西と郷家の2人を捉えることができる。なので、プレスも掛けやすい上に、次に人とボールがどこへ来るのか予測も立ちやすい。
加えて、MFイニエスタも右利きの選手であるため、左サイドに寄りがちだ。そのことも、この試合の攻撃に大きく影響を及ぼしている。
また、神戸は守備面でも松尾と中山の2人に、スピードとテクニックで苦戦。西と豪徳が高い位置をとる分、CBの両脇は相手にとって格好の的になり、失点もここから生まれている。
またDF大崎とDFダンクレーからなるDFラインも、相手のカウンターに対して下がる一方だった。どこで奪うのか明確な意図は感じられず、ラインコントロールに必死でスペースとボールに対してチャージできていないように見えた。
一方、横浜FCは試合を通して守備に徹していた。決して高い位置からボールを奪いにいくことはなく、構えて奪ってからサイドの単独突破で攻撃を試みるという形だった。
まず、攻撃時のバリエーション不足は否めない。松尾と中山の二人に任せた単独突破がほとんどで、一美も昨年の京都で開花させた才能を見せることはなかった。
守備の網目でボールを奪っても、ピッチではチームの全体的な位置が低いためビルドアップも困難に。また後方から繋いでいく際の単純なミスも多く、終盤は特に目立った。失点も不用意なパスミスからのものだ。
後方に至っても対角にロングボールを蹴れる選手がいれば、攻め込まれた中でも打開策は見つけやすい。今季の降格はないものの、来季に向けて横浜FCは、攻撃のバリエーションを高めていく必要があるかもしれない。
ただ、MF瀬古のトランジションの判断力と速さは、試合を通して素晴らしい出来だった。攻守においてチームに貢献できるプレーヤーであり、今後も注目の選手だ。
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