1.メンバーとスタッツ
スターティングメンバー:
- 久々に横浜FCです。最後に書いたのは5節の岡山戦。6〜9節は8節の琉球戦以外は一応見てました。その辺の感想も含めて書いていきます。
- 私がサボっていた間、メンバーがある程度入れ替わっています。まず開幕から好調だった齋藤功佑が7節から離脱。ここ3試合は高橋秀人と大卒ルーキーの田部井が起用されていますが、前者はプレーエリアがより後ろめで、後者は同じ左利きの手塚とかぶってしまう印象で、その辺りも考慮してこの試合は安永が初スタメンとなったのでしょうか。
- 両WBで開幕から出場していた右のイサカゼインと、左の高木も6〜7節で入れ替わっていて、イサカは負傷だったのでしょうか?両者ともこの試合から戻ってきました。
- 最終ラインは岩武だけが全試合スタメン出場。その岩武を左に回して、ガブリエウを中央に置いた前節は、ジェフの大型FW・櫻川ソロモン対策だったのかもしれません。そして前線は、小川と組ませる選手に伊藤翔とフェリペヴィゼウの併用が続きます。
- 仙台は今シーズン初めて観ます。試合前の段階で4位といい位置につけています。最終ラインの平岡と若狭、トップの冨樫、中盤センターのフォギーニョあたりが重用されているようですが、こちらも割とメンバーを入れ替えながらのようですね。
スタッツ:
2.互いの狙いや仕組み
似た形でのPressing:
- 横浜FCの話は何度か書いているので、仙台の話を中心にしていきます。
- 「似た形」とは、お互いに前線2トップで相手に対して同数のマッチアップを作って、1on1で人を捕まえていく様子が見られたことを指します。
- 違いは、Pressingとして見たときに、横浜は1人1人の持ち場というか役割が明確で、2トップの小川とフェリペは仙台のCBだけを見ている。ボールが動いて、仙台のSBが登場すればWBが、中央でフォギーニョや中島がボールに触れば、安永と長谷川が出てくるといった形でそれぞれの役割分担や受け渡しが明確になっている。
- 対する仙台は、横浜FCよりも2トップがカバーする範囲が広めで、仙台の2トップのスタート位置は安永の前、ピッチ中央からですが、そこから横浜のCBまでを2人でカバーします。この際に両方ともCBに出ていくと、安永がフリーになって前を向かれて展開されてしまうので、必ず2トップのどちらかは安永を見るようにしている。
- 2トップ2人で横浜のCBとアンカーの計3人を見ているともいえるし、仙台のFW1人でCB2人を見ているともいえますが、仙台はの狙いとしては、ピッチ中央を空けたくない。フォギーニョと中島がStayしてなるべくスペースを埋めつつ、降りてくる長谷川を見たり、最終ラインのサポートに向かえるようにしたいので、2トップの負荷が大きめになっています。
3.試合展開
バイタルエリアの番人:
- 仕組み上、CBがフリーになりやすい横浜FCがボールを持つ展開で序盤は進みます。
- ボール保持時のシステム1-4-1-5、というか「1-4-1(安永)-1(長谷川)-4」に近い横浜のCBはいつも通り、「4」の選手を狙ったロングパスを繰り出します。仙台の4人のDFのうち、パワーと経験のあるCB2人が横浜の2トップに対して体を張って対抗。フェリペヴィゼウは45分間でボールタッチ10、小川も90分で24回と多くはなく、仙台はある程度は補給路を断つことに成功していました。
- そして横浜が頻発させるサイドへの長いフィードへは、SBと、時にはプレスバックするSHで適宜受け渡しながら対応します。仙台はSHが下がって守備をする意識が強く、名倉も氣田も下がっての対応となると、8人が下がって対応するので、横浜の前進を許容するというか押し込まれた形になる。それは承知の上で、横浜が仙台陣内に入ってくると、まずは枚数確保して中央のスペースを消して、小川とフェリペへのクロスボールを迎撃する態勢に入ります。
- 横浜の左WBの高木にボールが入ると、仙台は名倉や真瀬の意識と目線が必然と外側に向きます。そのタイミングで、横浜は長谷川がポジションを上げて、真瀬の背後を狙ってくる。これは右の小川は持っていない形で、チームに「FWに放り込む」以外のオプションを与えることになります。
- フォギーニョのミッションはこの長谷川のケアで、そのために前線のプレスに参加せず、長谷川が動くのを監視しながら中央で待っている。長谷川が高木のサイドでサポートすると起動し、CBの若狭と平岡を中央の防備に専念させるタスクを担っていたと思います。横浜の前線は、長谷川以外のタスクはシンプルで、長谷川がいわゆる”変化をつける”役割なので、フォギーニョがこのエリアをどれだけ封鎖できるかはゲームのポイントになっていました。
狙い通りの形で仙台が先制:
- 仙台は撤退が早くて、「ちょっと重心重めかな?」と感じるのですが、押し込まれてもサイズのある2トップにロングフィードを当てて陣地を押し戻せる計算だったと思います。
- これは仙台の2トップが強いから、ともう一つは、横浜は仙台陣内でプレーしている時は、Pressingだろうと、ボールを保持して攻撃している状態だろうと、前方向に人を多く送り込み、かなり前がかりなスタンスでプレーしているため。
- ▼の図ではPressingのシチュエーションをイメージしていますが、長谷川と安永が前に出てくるので、手塚の周囲が空く。ボールを保持している時は、安永が中央に1人でいることが多いですが、同じく中央を1人で守ることは難しいため、仙台はボールを早めにここに送り込んで、2トップが競ってから名倉と氣田がスペースを使って速攻を仕掛けるイメージを持っていたと思います。
- その狙い通りと思われる形で18分に仙台が先制します。左ハーフスペース付近で受けた氣田が中央に高速ドリブルで侵入して、正面からブローダーセンの左を抜くファインゴール。日本人選手でこうした素晴らしいドリブルから残念なフィニッシュ、はしばしば見るだけに非常に見事なゴールでした。フィニッシュの直前に、ボールを中央に置いてどちらにもシュートを蹴れるアングルを作って、インパクトの瞬間に腰を捻って(開いて)利き足方向に蹴った技術が「巧」でした。
好調の影の立役者:
- 前線が沈黙する横浜はHTに3枚替え。ガブリエウは負傷交代と見られますが、フェリペ→伊藤と、イサカ→山下と切り札的なカードを早々に切ってきました。
- この交代策がすぐにあたっちゃうのが首位のチームの勢いでしょうか。52分、最終ラインの中村の低くて速いフィードが仙台のSB真瀬とCB平岡の間のスペースへ。小川がゴールから離れる方向に走りながら、うまくバウンドを合わせて左足一閃で同点。GKストイシッチが身体0.5個分ニアに寄ってしまった感じもしますが、判断が分かれるところでしょうか。
- このゴールから間もない56分、左WB高木が早いタイミングで仕掛けます。切り返して逆足の右足アーリークロスに小川がニアで合わせて逆転。CB若狭と平岡の間に入ってきた小川に対して、仙台は先にポジションにいた長谷川を意識したこともあって小川を捕まえきれませんでした。
- 小川は2点目と似た形…長谷川の右足インスイングのクロスでのアシストに合わせる形でここまで2点取っていたのですが、クロスボールをファーで待ってスタンディングの体勢から競るよりも、助走をつけて飛び込む形の方が得意なようです。この点では、フェリペと組ませて右シャドーだと、ゴール前でポジションが被ってしまいがちなため、フェリペがいない方が合わせやすいのかもしれません。
- この試合や小川の2点目以外も含めた感想というか私見を述べますが、横浜の好調を支えている一人が、右シャドーに入った時の伊藤翔。伊藤が右シャドーに入ると、常に浮いた位置からスタートするので小川とマークが分散されやすく、また相手のSBの背後をとるのがうまく、サポートに来たCBを引きつけて小川にラストパスを出せる器用さというか万能性も光ります。
- 小川・フェリペのユニットだと、前に2人張る時間帯が多くなりますが、伊藤は下がってボールを収めたりもできるため、小川、長谷川よりも出場時間は少ないながら、序盤戦の影の立役者だと見ています。
- 試合に話を戻すと、仙台はビハインドとなってから名倉→加藤、皆川→カルドーゾ、中島→デサバト。フレッシュな選手を入れて巻き返しを図りますが、現状はMFのボールキャリーが生命線というか、名倉が代わって、氣田にも疲れが見え始めると、前線にボールを届けることに苦労する展開になっていた印象でした。
4.雑感
- ここまでの9試合で、横浜FCが苦戦したのは水戸やジェフの、5枚のDFでスペースを消して守るスタイル。4枚で人を捕まえるスタイルの仙台だと所々にスペースができていて、ちょっと相性悪いかなぁという印象で、小川の爆発がなくとも4枚のままだと逃げ切れるかは微妙だった印象でした。
コメント(1)
-
SPORTERIAスタッフ
2022/4/18 10:02
>ここまでの9試合で、横浜FCが苦戦したのは水戸やジェフの、5枚のDFでスペースを消して守るスタイル。4枚で人を捕まえるスタイルの仙台だと所々にスペースができていて、ちょっと相性悪いかなぁという印象
前半30分、38分のように対角のロングパスを入れられると4枚が広がってしまう&2列目が最終ラインに吸収されやすくなって重くなる感じがしますね。
クロスをアーリー気味に入れているのも相手のサイドバックが1枚浮く感じがあり、中での質的優位で勝負する意識的に回数を増やしているような気がします💡(山下選手は縦に勝負するのが効果的なので、使い分けでしょうか)