水曜に行われた長崎戦は、2-3での敗戦。

2点を先制され劣勢だったが、後半には一時追いつくなど、修正力と意地を見せた一戦となった。


長崎はクリスティアーノ、エジガルジュニオ、都倉賢を代表としてJ1での出場経験が豊富な選手が多い。

スタメンの平均年齢は4歳ほど、J1での平均出場試合は50試合ほど異なる。


スタメン平均年齢

  • 群馬:25.8歳
  • 長崎:29.3歳


スタメン平均出場試合数(J1)

  • 群馬:22.0試合
  • 長崎:68.6試合


この「若さ」が試合のカギだったのではないかと考えている。

経験がないからこそ序盤は対応に遅れ、

経験を試合中に吸収し飛躍的な成長を遂げる。

本記事では、群馬の選手の若さに注目して分析を行っていく。



基本スタッツ




山中VSクリスティアーノ


まず着目するのは、山中惇希(20歳)だ。

左SBとして先発出場。対峙する相手はJ1で60ゴール以上を記録しているクリスティアーノ。


前半は、勇気をもって高い位置を取ったものの

その分クリスティアーノに裏のスペースを使われ、好き勝手される機会も目立った。


ただ、後半はクリスティアーノとの距離感をうまくつかみ、

機を見ては得意なドリブルで切り込むなど、後述する天笠とともに何度もチャンスメイクに関わった。


3年目、しかもMF出身の山中にとって、クリスティアーノのようなキックと突破力を持った選手と対戦するのは初めての機会だったかもしれない。

2G1Aを許したのは悔しい結果だが、それと同時に90分アグレッシブに戦った証拠でもある。

この2G1Aは精一杯プレスし、精一杯前向きに戦った勲章ともいえる。

いつか山中がビッグな存在になり「あの日クリスティアーノに好き放題されたよな」なんて思い出話をする日が来ることを楽しみにしている。



攻撃スタッツ - クリスティアーノ攻撃スタッツ - 山中 惇希



奥村を軸とした後半の修正


続いて紹介するのは、奥村晃司(23歳)と田中稔也(24歳)だ。

奥村は田中に替わって後半から右SHとして出場。右サイドの攻撃の活性化を任された。


群馬の前半の課題は、右SB小島にボールが渡った時に選択肢がないこと。

群馬は攻撃時に3421のような立ち位置を取る。

この時、シャドーの位置の田中が裏抜けを意識し高い位置を取るため、ウィングバックから小島からはパスが出しづらく、小島は仕方なくバックパスを選択する場面が目立った。

(実際パスネットワークを見ると、小島の後ろ方向へのパスが多いことが分かる。「前!前!」という指示が大槻監督から何度も飛んでいた。)


パスソナー・パスネットワーク


正解は右SH(シャドー)の選手が高い位置を取らないことだった。

というのも、長崎はクリスティアーノが攻め残りする分、433のような形で守る場面が頻出する。

なので、右SHの選手が中間的なポジションを取ることで、相手の2列目の3人を困惑させることができる算段だ。

(柏レイソルはこの形で何度もやられてきた。クリスを右SHで先発させる時は守備に奔走できる選手を左SHにしないと大変なことになるのだった。)


田中の裏への意識と運動量に群馬は何度も救われてきた。

ただし、今日はその田中の強みが裏目に出た結果となった。


一方、交代で出場した奥村はボランチを主戦場とする選手。

田中と奥村のヒートマップを比べると、奥村は低めでボールを受けていることが分かる。

奥村投入で攻撃は活性化され、奥村はご褒美のプロ初ゴールも記録した。


奥村はあっぱれの活躍、奥村投入を決断した大槻監督はさすがの修正力だった。

ただ強敵に勝つには、監督の修正を待たずに自身で修正する力も求められるだろう。時には自身の強みを抑えることも大切になってくる。

初ゴールを記録した奥村、今季から10番を付ける田中、両者の飛躍に期待した。



ヒートマップ - 奥村 晃司ヒートマップ - 田中 稔也


攻撃スタッツ - 奥村 晃司



1秒ごとに上手くなる天笠


最後に紹介するのは天笠泰輝(21歳)だ。

前節で相手のオウンゴールを誘発した天笠だったが、今節では正真正銘のプロ初ゴールを決めた。


特に後半は獅子奮迅の活躍だった。

狭いスペースへのパス、圧倒的なキープ力、鋭いクロスを幾度となく繰り出し、決定機を演出した。

試合を終えてみれば、チーム最多のシュートと9本のクロスを記録するなど、まさに群馬の攻撃の要だった。


天笠は高校時代「青森山田の心臓」と呼ばれたほどポテンシャルの高い選手。

クリスティアーノや奥井といった実績抜群な選手を間近でみて、彼の中で科学反応が起きたのはないだろうか?

まるで少年漫画のようなスピードで成長をみせる天笠に今後も注目だ。


攻撃スタッツ - 天笠 泰輝




以上、本記事では「若さ」を中心に長崎戦を振り返ってきた。

経験不足が失点につながる部分があると同時に、発展の余地が大いに残っていることを見せてくれた試合でもあった。

前節の新潟戦と同様に、前半に2失点し後半に盛り返すという展開になった。

後半に盛り返す気持ちの強さやスタミナはこのチームの大きな魅力だ。今後はハーフタイムの修正を待たずして、自身で修正できる強さを身に着ければどんどん強いチームになれる。


サッカーのリーグ戦の面白いところは、相手ともう一度戦えるところでもある。

次に長崎と戦う時に、成長した彼らの姿を見るのが楽しみだ。