鶴を意味するグルージャと形が鶴に例えられる群馬県、J2で初となる”鶴ダービー”は壮絶な我慢比べとなった。

両者が決め手を欠く中、試合が動いたのは89分。必殺のショートカウンターから平松がゴールを決め、辛くも群馬が勝利した。


ブレンネルに手を焼き、17本もシュートを打たれるなど反省点も残ったが、

90分我慢をして今季3度目のウノゼロ勝利を決めたことは、褒められるべきだろう。


今日はザスパの”我慢”を支えた、GK櫛引の活躍と後半から採用した334ビルドアップについて触れていく。

基本スタッツ



GK櫛引、神セーブ連発


まず紹介するのは【新摩天楼】ことGK櫛引政敏。

開幕から神セーブを連発し何度も窮地を救ってきた彼だが、今日も素晴らしかった。

相手のシュートは17本、期待得点は2.63。得点が決まりやすいシュートを数多く浴びながらその全てを防ぎきった。


参考:ゴール期待値の定義や算出方法


特に1分間で3本のシュートを防いだシーン(72分頃)は今後語り継がれるレベルだ。

①グラウンダークロスに走り込んだビスマルクのシュートを体を投げ出してブロック

②跳ね返ったボールを桐がフリーでシュート。これも腕を精一杯伸ばしてブロック

③ブレンネルが切り込んで45度の角度からシュート。これもジャンプしながら手の先でかき出す

と、1分で3度の決定機を防いだ。

櫛引の筋肉質な巨躯は、まるでゴール全体を覆う巨人のようだった。



GKスタッツ - 櫛引 政敏

ゴール期待値



334ビルドアップで前進し、ピンチを遠ざける


続いて紹介するのは、334型のビルドアップだ。

岩手は前半途中から守備ブロックを541から532に変更。2トップが岩上風間を上手く消しつつ、中央の守備を手厚くしたことで、群馬は前進するのに苦労していた。


これの解決策となったのが、60分の内田投入から始まった334型のビルドアップ。

ボール保持では小島天笠の両WBを最前線まであげ、FW加藤は降りないように徹底し4トップのような形に。

4トップが相手の5バックを常に固定することで、後ろで6(3バック+3センター)vs5(2トップ+3センター)の数的優位を作り出した。

左右のCBがボールを運んだり、3センターの効果的なワンタッチパスで効果的な攻撃を演出した。

また、ビルドアップで押し込むことで相手のロングボールの脅威を減らしていた。まさ攻撃は最大の防御なりといったところだ。


小島天笠のヒートマップを確認すると、最前線と最後尾の2箇所に偏っており、この2人がいかに勇気をもって高い位置を取っていたかが分かる。

ここまでWBが高い位置を取るのは今季初めてだと思うが、今後の試合でも334型のビルドアップを行うかに注目だ。


だが両WBが高い位置を取る分、守備では裏を取られる場面もあった。(これが櫛引の神3連発にもつながった)ここは改善を期待したい。

ヒートマップ - 小島 雅也ヒートマップ - 天笠 泰輝





交代選手で我慢比べを制す


櫛引の神セーブや創意工夫を凝らしたビルドアップで、なんとか相手の攻撃を我慢したザスパクサツ群馬。

89分、最後に待っていた先制点はまさに我慢のご褒美だった。


途中出場の奥村が中盤でボールを奪うとショートカウンター開始

途中出場の北川が前線でタメを作り、右でフリーの風間に展開

途中出場の平松が相手DFとの駆け引きを制し、風間のクロスに飛び込み得点


フレッシュな選手の判断・走り・気合で勝点を1から3に伸ばした。

これで3試合連続で途中出場選手がゴールを決めた。


選手たちはスタメン争いに火花を散らしながらも、お互いの役割をリスペクトし、チームは最高の雰囲気だ。

「18人全員で戦う」これはよく大槻監督がよく使う言葉だが、まさにこの言葉通りスタメン+リザーブで勝ち切る戦い方を継続している。


サッカーは数的優位が大事なスポーツ。

11人のスポーツに18人で挑む点が群馬の一番の強みと言えるだろう。




攻撃スタッツ - 奥村 晃司攻撃スタッツ - 北川 柊斗攻撃スタッツ - 平松 宗