3連戦の最後で、両チームともおそらく疲労が溜まっている中での試合。

秋田は、長崎相手にアウェーで逆転勝利を収めた前節から2人を入れ替え試合に臨む。フォーメーション図

一方の磐田も前節から2人を入れ替えた。磐田は前節愛媛にアウェーでスコアレスドロー。しかしピッチコンディションは最悪の状況で、勝ち点1も悪くなかった結果と言える。

フォーメーション図

結果から見ると、1−1の引き分け。スタッツ的にもそこまで差異はなかった。

基本スタッツ

前半

はっきりと言ってしまえば前半は秋田の試合だった。というより磐田があまり良くなかった。もちろん風下であった磐田はセーフティにプレーしようとする意図もあっただろうし、ピッチが乾いていたためというのもあっただろう。しかし磐田は全くといっていいほどボールを繋げなかった。


一番初めにシュートを放ったのは磐田。右サイドのFKからのシュートだった。そしてこれが前半の最大のチャンスだったと言えるだろう。ゴール期待値は0.4付近を記録していた。


しかしその後は、磐田には全くチャンスがなかった。ボール保持すらできなかった。秋田は徹底的に最終ラインの裏、特にサイドを狙ってきた。風に乗ったボールは対応が難しく、サイドで囲い込まれて、サイドに出すか、蹴り返すかしかできなかった。秋田はそれを拾って二次攻撃という形が続いていた。


29:50くらにようやくといっていいくらいに、磐田ディフェンスラインが落ち着いてボールを保持でき、いい縦パスがライン間に入り、その流れでシュートに持っていけた。


32分に秋田が先制する。右サイドでのスローインを素早く始めたことで、瞬間的に2vs1を作り出していた。ワンツーで抜け出し沖野がクロス。中でスルーし、輪笠が冷静に流し込んだ。沖野はクロスが4本とチーム最多で、アタッキングサイドを見ていても右サイドからの攻撃が多く、起点となっていた。


攻撃スタッツ - 沖野 将基

その後は磐田も少しづつボールを持てるようになり、シュートも何本か放ったがゴールを脅かすまでには至らなかった。


秋田は前半のシュート・枠内シュートがそれぞれ9本・5本で、磐田の5本・2本を上回った。磐田の攻撃がうまく行っていなかったのは、パス本数にあらわれていて、177本の成功率63%と軒並み低い数字であった。また磐田の平均ポジションも低かった。

ゴール期待値

後半

後半は完全なる磐田のペースとは言わないまでも、磐田がだいぶ攻勢を取り戻した展開になった。風上に立ったこと、そしてなにより遠藤の投入が安定感をもたらした。

攻撃スタッツ - 遠藤 保仁

最終ラインからしっかりボールを受け、ボールを散らす。ほとんどミスがなかった。後半のみのプレーでパス数が51。歳を重ねても遠藤は遠藤だった。


そんな中でも秋田は55:10頃に絶好のチャンスを迎える。加賀が裏へ蹴ったボールはシュートには結びつかなかったが、斎藤がサイドでキープし、磐田の大井が釣り出される。斎藤は沖野に下げ、沖野は鈴木に下げる。鈴木がワンタッチで裏にけり輪笠が受け、前向きの沖野にパス。その時点で中は3vs3。マークもしっかり付けていなかった。沖野がクロスを上げ斎藤がダイビンヘッド。しかし磐田のGKに阻まれた。ここが決まっていればというシーンであった。

このシーンに限らず秋田は、ワンタッチでパス、クリアをすることが多かった。相手のタイミングをずらすこと、そして味方がそのタイミングを理解していることで、多少アバウトなボールでも脅威になり続けていた。


しかし、疲れもあるのか秋田はどんどん押し込まれるようになっていく。78分に稲葉のいいボール奪取からゴールに迫るがシュートは打てず。

80分台には磐田に立て続けにチャンスを作られてしまう。全体的にラインが低く、あともう一歩が出ない。


そうして、90+5分に被弾。ルキアンのクロスのこぼれ球から、大津が蹴り込んだ。PA内ということもあって強く行けなかったのかもしれないが、ルキアンにしっかり体を寄せ、クロスを上げさせないべきだった。


総評

秋田は追いつかれはしたものの、非常にいい試合であった。ルキアンを谷奥がしっかりと抑え、ほとんど仕事を點せなかった。意外に思ったのが、守備時には4−4−1−1で守り、1トップ(斎藤)は守備を多少軽減されていた。カウンターの起点となることを求められているのだろう。栃木よりもプレスの強度はやや低めだなと思った。個人的にはボールを保持するサッカーの方が好きだが、秋田は自分たちのサッカーを貫き通していて、逆に非常に好感が持てる。まだ先は長いが、J2残留は堅いと思う。また、京都、磐田と強豪相手に計勝ち点4。来月の琉球、新潟との試合も面白い試合をしてくれそうだ。


一方の磐田は、質の高い選手がいるが、チームとしての完成度はまだまだな印象。外的要因があったとはいえ、秋田に押されるシーンが多かった。遠藤は素晴らしかったが、毎試合のフル稼働は期待できないと考えると、ボール保持の部分で改善できないと、京都、琉球、新潟を追い抜くことは難しいだろう。

時間帯別パスネットワーク図