こんにちは、ユースケ@サガン鳥栖です。

この試合久しぶりの現地参戦してきました。昨シーズンはコロナ感染リスクを徹底的に排除するために一度も行きませんでしたので実に1年以上ぶりになります。九州でも感染者が激増しているので、またもう少し自重すべきかなと思っています。早く何の気兼ねもなく見に行けるようになって欲しいものです。

それではレビュー行ってみましょう!

まずはスタメンです。

フォーメーション図フォーメーション図

鳥栖は前節に引き続きほぼベストメンバーと言える陣容。酒井は今節もベンチに入っておらずやっぱりケガしちゃってるみたいですね。対する広島ですが鮎川と佐々木以外は前節神戸戦と同じで、システムは今年から導入している4バックです。

■樋口をつり出しその背後のスペースを狙ってくる広島

画像は前半14分頃の広島のビルドアップ例で鳥栖が対応に苦慮した形。両サイドバックが高い位置を取りCBの間にボランチの青山が降りてくるという、4バックのチームが良くやるビルドアップですが、ここに樋口がプレッシャーに行くのでその背後にスペースが出来てしまいます。ここを10番の森島が上手く使ってボールを受けていました。

絶妙な距離感で受けるので、松岡が行くのかソッコが前にでて対応するのかハッキリとできませんでした。あれだけの選手にフリーで前を向かれると下がって対応せざるを得ないので、いつも鳥栖がやっている高い位置でボールを奪うというのが難しくなりましたね。途中松岡とソッコが話をしてましたがここの対応をどうするかを話していたんだと思われます。

結局前半の鳥栖は高い位置でボールを奪ってからの攻撃ではなく、後方からのビルドアップからの攻撃が主になりました。これに対して広島は4-4-2でしっかりブロックを作って下手に動かず隙を見せてきませんので、中々決定的なチャンスを作るところまでは行けませんでした。

鳥栖はあの手この手で人とボールを動かし相手の守備組織をずらそうとしますが、最近はそこに食いつき過ぎず動かないことを選択するチームが増えてきましたね。

■後半、広島の右サイドの守備の緩さを突く

前半は相手がブロックをしっかり形成してなかなか動いてくれないので、それを利用する形で鳥栖が押し込み始めました。「釣られてくれないなら間で自由に受けさせてもらうよ」と言わんばかりに小屋松が中間スペースでボールを受け始めます。

画像は後半立ち上がりのシーンですが、小屋松が14番エゼキエウ、8番川辺、2番野上の三角形のちょうど真ん中あたりでボールを受けてビルドアップをサポートし始めます。(最近は仙頭が右寄りでプレーすることも多いので、そういう時はここにスペースがあることが多い)

通常であれば川辺か野上が素早く潰しにいくべきところですが、エゼキエウのコースの切り方が悪く限定できていないので、川辺もしくは野上が思い切って潰しに行けません。前の選手が限定も出来ていないのに後ろの選手が不用意に動くと、もしボールが出てこなかったときに自分がいた場所を空けてしまい相手に使われてしまう危険性があるので躊躇してしまう訳です。

例えばエゼキエウがもう少し中に絞って小屋松へのパスコースを切りながらエドゥに寄せることが出来ていれば、鳥栖としては大外の中野へ出すしかなく野上も予測ができ素早く蓋をしにいけます。結果エゼキエウは後半12分に交代してしまいますが、代わりにこのポジションに浅野が移ってきてからもこの状況は変わらず、鳥栖は左サイドからチャンスを作れてましたね。

この後鳥栖も中野嘉、大畑と左サイドを二人とも代えてさらにここを突いてきます。明輝さんが試合後インタビューでこの広島右サイドの守備の緩さを突きたかったと言ってましたね。実際再三このサイドから深くまで攻撃できていたものの最後までゴールを割ることは出来ませんでした。

■気になっていた中野君のポジショニングの答え合わせ

今回スタジアムに行ったのは中野くんのポジショニングを確認するためでした。ツイッターでもちょっとだけ呟いたんですが、開幕当初よりも少し中に絞るポジションを取る場面が増えているなと感じていて、どういった時にそういったポジショニングをしているのか気になっていました。

まあ答えとしては「相手の立ち位置を見ながらその時その時で最善のポジションを取っている」という事になるのですが、具体例をひとつ挙げるならば、仙頭が空けたスペースを相手が狙ってくるときですね。この試合でいうと右SHのエゼキエウが中に入って狙っているときです。ここにボールが入ったときにすぐさま寄せに行けるようなポジションを取って事前にケアしておくという事です。鳥栖の守備は人を捕まえるマンツー気味なので当然と言えば当然ですし、これ自体は東京戦や徳島戦でも確認できています。

加えて実は中野君、守備時だけでなく攻撃時にも仙頭と小屋松のポジショニングによっては内側のレーンでプレーすることがあります。これは開幕当初はあまり見られなかったプレーです。

仙頭と小屋松の立ち位置次第で中野君の立ち位置が決定されるのは原則として今までと変わりありませんが、仙頭と小屋松のタスクに変化がみられるようになり、中野君のプレーエリアも微妙に広がってきているんだと思います。

開幕当初は小屋松が中に入ってプレーしているときは、その外側にできたスペースを中野君が使ってましたが、この場面は小屋松が再び外に開き誰もいなくなったスペースに今度は中野君が入ってきてボールを受けます。これだけリーグ戦も進んでくると相手もかなりスカウティングしてきますから、いつも同じではなく少し変化をつけてきているんだと思われます。

当たり前のように今お伝えしてますが、これを17歳が普通にやっているのは本当に驚きです。「相手の立ち位置」と「味方の立ち位置」を俯瞰でみているようなプレーぶりですし、何というかプレー範囲やタスクがもの凄く広がってますね。CB、SB、CHの仕事を状況によって全てこなしている。

もうすでに現時点で欧州の香りのするサイドバックになってきてるなぁ、と感心するばかりです。これからこのCHのような位置でのプレーが増えてくると、ひょっとするとゴールまで決めてしまうかもしれませんね。

■ここ最近の中盤の選手のタスクの変化

前述のポジショニングの件に関連するのですが、ここ最近中盤の選手のタスクに変化が起きています。簡単に順を追ってお伝えしていくと、

①樋口がFWっぽいプレーをし、組み立てに参加しないことが増えている。

②そうすると右サイドの中間スペースで組み立てる選手がいなくなるので仙頭は右でもプレーする。

③その時、左の元々仙頭がいた所にスペースが出来るので、ここを小屋松or中野くんが使って組み立てをサポートする。

もちろんずっとこれでは無いのですが、樋口にツートップと一緒に前線からのプレスに参加させるときはバランスをとるために大体こうなります。(このバランスを前半は取れなかったので樋口の背後のスペースを使われてしまいました)

要はこれも相手のビルドアップ枚数に応じて前線からのプレスの人数が変わるので、後ろの配置もどんどん変わっていく訳です。先ほどの中野君ポジショニングボード画像がまさしくこの形です。

鳥栖のフォーメンション図が媒体によってバラバラなのは、こういうパターンをいくつも使い分けているので、そもそも決まった立ち位置というのが無いからと言えますね。(もちろん撤退時の帰陣位置は決まった位置があります)

【まとめ】しっかりブロックを作ってくる相手に対し崩すための工夫は見られた

さて試合は結果的に無得点のスコアレスドローに終わったわけですが、しっかりブロックを作ってくる相手からどうゴールを奪うのかという点で少し改善が見られました。「ゴール前での縦パス」「ミドルシュート」「ダイレクトプレー」「サイド深くまでえぐってクロス」などいろいろと工夫しているのは見て取れました。

結果的にパスが微妙にずれたり肝心な所でミスが出たりといまいち噛み合わないことが多かったですが、狙いは良いんじゃないかと感じましたね。後は最後のところの精度だったりコンビネーションだったりが向上してくれば得点できそうなところまでは来てると思います。

広島はこの鳥栖戦まで少し悪い流れで来ていたので、まずは守備から入って失点しないことを意識していたようですね。城副監督の試合後インタビューからすると、守備から入ったのは間違いないものの、あそこまで引くつもりはなかったようですけどね。

それだけ鳥栖が、特に後半は広島の想定以上に押し込んでいたという事です。鳥栖のミスから時折見せるカウンターなんかは、なかなかに鋭いものがありましたし、一応それでゴールを奪うというのが広島の勝ち筋ではあったと思います。

いかがでしたでしょうか?

やっぱり現地で見ると映像ではわからないところが良くわかりますね。気になっていた中野君の件も確認できましたし、あと中野嘉が小屋松のタスクをしっかりこなし始めているのも確認できました。特に守備のタスクですね。きちんとサイドの深いところのケアも出来てましたし、後は攻撃のところで結果を出すだけですね。期待してます。

それではまた。