こんにちは、ユースケ@サガン鳥栖です。

札幌戦が終わった後に前節のレビューを出す特殊なスタイル笑

さて鹿島戦、鮮やかな逆転勝利でしたね!こんな早い時間に先制点を奪われたのは今期初めてでしたので、逆転できるかどうかチームの真価が問われましたが見事やってくれました。

登り調子で地力のある強い鹿島を相手にああいう勝ち方ができるというのはポジティブにとらえていいんじゃないでしょうか。少なくとも実力がないとできない勝ち方でした。

それではレビュー行ってみましょう!

まずはスタメンです。

フォーメーション図フォーメーション図

鳥栖は前節大分戦から林に変えて風智を起用。対する鹿島ですが右SBの常本が前節の退場により出場停止のため広瀬を起用してきました。

■鳥栖の立ち上がりは相手を観察する時間帯

鳥栖は立ち上がりに相手の立ち位置や攻め方、プレス人数などを確認して、自分たちの立ち位置やビルドアップの人数などを決定していきます。スカウティングで大体はわかると思いますが、相手がその通りにやってくるかどうかは始まってみないとわからないので、確認するという事ですね。

毎試合これをやっているので、序盤は意外と押し込まれることも多いです。これが前半10~15分くらい経つと確認も終わり立ち位置や、やるべき事が明確になってきて押し返し始めます。

この鹿島戦ではその確認の時間帯に先制されてしまいました。鹿島はボールを奪うと縦に速くシンプルに攻撃してきます。的確にスペースを突いてくるので、まだ明確な立ち位置が確認できていない序盤の鳥栖には特に効果的でしたね。セオリー通りアンカー(松岡)の脇をクイックリスタートから上手く使われました。

まあ、恐らくこういうことは今後も起こるとは思いますね。ただ試合を重ねるごとに経験値が蓄積されて、この確認作業にかかる時間も短くなってくると思うので、この失点に関してはそんなに心配する必要はないかなと思います。もちろん失点しないに越したことはないですけどね。

■攻略ポイントは鹿島右サイド

この試合2ゴールとも鹿島の右サイド(鳥栖の左サイド)を深いところまでえぐった事で生まれました。なぜこのサイドを上手く使うことができたのか、2ゴールを振り返っていきたいと思います。

画像は同点ゴール直前の左サイドの崩しです。この場面、仙頭がボールを持った時、中野嘉が20番三竿の視界に入るようにポジションを取り牽制します。

三竿は中野嘉が気になって仙頭のところへはプレスに行けないので、ここは右SHの27番松村がプレスに行くことになります。仙頭から中野伸にボールが出ますが、松村は仙頭に対しプレスに行ってしまっているので、中野伸に対しては右SBの22番広瀬が行くしかありません。

で、その広瀬がいた所にスペースが出来るので、中野嘉がすかさずそこへ侵入しボールを呼び込みます。元々インサイドレーンにいた中野嘉が大外レーンに移動することで、2対1の状況を作り出しています。相手と味方の立ち位置を見て判断した凄く良い動きです。この後左サイド深くまで侵入した中野嘉のクロスからゴールが生まれました。

お次は2点目直前の左サイドの崩しです。

この場面の始まりは鳥栖の右サイド深くです。全体的に右サイドに両チーム密集していました。ですので左サイドには大きなスペースがあります。そこにエドゥがロングボールを放り込んだ場面です。直前に小屋松がこのスペースを指さして呼び込んでいます。

本来ここにいるはずの右SBはどこに行っちゃったかというと、またも中野伸のところへ。ボールがエドゥに戻った瞬間、中野伸は大外へ向かって走っていきます。それを気にして右SBの小泉は中野伸にパスが出たらすぐ寄せれるところまで移動してポジションを取ります。

このとき中野伸が小泉が釣られているかどうかチラチラと確認しているのが良いですね。小屋松のためにスペースを空ける動きをちゃんと意図してやっています。

こうやってまたしても右CBの39番犬飼との1対1の状況を作り出します。犬飼が釣り出されているので町田と永戸が中央に絞ります。そうすると逆サイドが完全に空いてしまうのでそこから樋口のゴールが生まれました。

■なぜサイド深くを攻略するのが効果的なのか?

ここまで2ゴールの状況をおさらいしました。

1ゴール目はビルドアップから、2ゴール目はサイドチェンジとプロセスは違いますが、作り出した状況は全く同じです。どちらも鳥栖左サイドの奥をえぐることで生まれたゴールです。

この辺りのペナルティエリア脇のスペースの事を最近「ポケット」と呼ぶことが多いですが、ここを「上手く使うと良い」みたいな話を聞いたことあるかと思います。ではなぜこの場所が重要なのか?

画像は2点目の直前、小屋松がクロスを上げる場面の画像です。ポイントは体の向き。向きがわかりやすいように鹿島の選手にはアームと矢印をつけています。

守備のセオリーとしてマークする相手とボールを同一視野に収めるというのがあります。ですので28番の町田と14番の永戸はそれぞれの相手、山下と林を視野に入れながらボール方向を見ています。小屋松がサイド深くでボールを持っているので当然そちらを見ますよね。

そうするとマークすべき相手とボールは見えてますが、自分の背後の状況となると全くわかりません。この場面で言うと黒丸で囲ったあたりのスペース、外側にいる仙頭と樋口の位置が把握できません。

仙頭がいるあたりのスペースは本来左SBの永戸が担当するエリアですが、サイド深くにロングボールを入れられてその対応をするために39番の犬飼が釣り出されてしまっているので、犬飼がいた所に町田が、町田がいた所に永戸が移動し中央を閉めないといけません。

そのため大外がガラ空きになってしまっていますが、みんな小屋松の方を向いているので、その危険なスペースを把握できないという事になります。大外から大外への攻撃が効果的と言われているのはこういう理由からです。

この後、小屋松のクロスが逆サイドの仙頭に渡り画像の様な状況になるわけですが、当然今度はみんな仙頭の方を向きます。

で、その仙頭はシュートに行きそうな雰囲気を出して、鹿島守備陣の意識を引き付けてからノールックで樋口にマイナスのパス。この時、鹿島守備陣は仙頭に視線が集中していて樋口の位置が把握できていないのでフリーでシュートを打たれてしまうという訳ですね。

余談ですが、仙頭からパスが出る直前、樋口は小さくバックステップして、シュートを打ちやすいスペースを自ら作り出しました。ナイスプレーでしたね。

上手くお伝えできているかわかりませんが、まとめると、横向きや後向きの状態の守備では視野に入れられないゾーンが出てくるので状況が把握しづらく、この見えていないゾーンに相手選手が入ってきたりすると単純に守りにくいという事です。

ですので「なぜサイド深くを攻略するのが重要なのか?」の答えとしては、ここに侵入することができれば「強制的に相手守備者をその守りにくい状態(体の向き)に出来るから」という事になります。

いかがでしたでしょうか?

このサイド深くを攻略する意図は、競技経験者の方なら多分当たり前に知っているような話ではあるのですが、サガン鳥栖を応援している方々の中には未経験者の方もたくさんいらっしゃるかと思い、今回改めてお伝えしました。

それではまた。