1.スターティングメンバー

フォーメーション図フォーメーション図


互いのシステム

  • 前節に続いて、横浜FCはボール保持が1-4-1-5、ボール非保持は長谷川が下がった1-5-3-2と私は解釈します。長崎は松田監督の十八番である1-4-4-2。
  • メンバーは、横浜は開幕戦と同じ。長崎は左SBに奥井⇨加藤聖、加藤大は2トップの一角から中盤センターにスライドして、エジガル ジュニオがスタメン。


マッチアップ


2.互いの設計

横浜FCの設計(ボール保持)

  • ボールを持っている時の仕組みは、基本的には前節と同じ。異なるのは相手の出方であって、1-4-4-2であまり人に強くマークしない(スペースを守る意識が強い)長崎に対しては、横浜FCの対角へのロングフィードが効果的でした。
  • 開幕戦で見たように、フィニッシュの狙いは左クロスにフェリペと小川。ですので右の岩武や中村から左にフィードを蹴っていくわけですが、4枚で守る長崎は、高橋峻希が大外の高木と、CB・SBのチャネルに出てくる長谷川やフェリペを両方ケアするのが困難。
  • 長崎の松田監督は、対角フィードに対しては全力スライドで潰してくるのでは?と予想してましたが、結果的には横浜のこの強みは長崎を特に序盤、苦しめることになりました。


横浜FCの設計(ボール非保持)

  • ここがまずゲームのキーになります。開幕戦ではミシャ札幌2020-2022のように、全ポジションで枚数を合わせたマンマーク戦法を敷いた四方田監督。
  • 監督コメントからも、長崎も今回、多分それを予想していたんじゃないかと私は思っていて、その場合、長崎の2トップを高さのない横浜のDFが1人でそれぞれ見なくてはならない。サイズとパワーのあるエジガルと都倉を並べておけば、サイズのないDF岩武が都倉もしくエジガルに1人で対応。ここに放り込んでいけば長崎は押し込めると思っていたのではないでしょうか。
  • 横浜FCの対策は、「マッチアップ」の図に記載した通り、今回は全ポジションで枚数を合わせることはしない。長崎のサイドバックは最初はあけておいて、ボールが出たらインサイドハーフ(長谷川と齋藤)がまずスライド。この際に、中盤3人で横幅を守り切るのは無理なので、長崎がサイドを変えると、反対サイドのSBには横浜のWB(イサカ、高木)が1列上がる形で捕まえます


  • このやり方だと、横浜はセンターバックが長崎の2トップと同数になることを回避できる。常にマークを背負わせたまま、1人はカバー役を用意できるので、DFはアグレッシブにアタックできる。都倉とエジガルに放り込むもなかなか競り勝てなかったことは、長崎にとって誤算だったのではないでしょうか。


長崎の設計(ボール保持)

  • 長崎は横浜FCのように攻守で形を変えることはあまりしない。
  • 松田監督のボールの動かし方はこの名著 に大体書いてあるのですが、中央を避けてサイドに迂回してからSBからの縦パスで前進。普通は、SHに対して相手がついてくるので、SHが引いたところの裏にFWを走らせて(サイドに流れる形で)起点を作ります。
  • この試合、長崎のボール保持はかなり右偏重で、右CB村松→高橋→クリスティアーノを飛ばしてエジガルへ…というパターンが多かったですが、昨年「長崎の江川っていいよね」とよく聞いていたので、江川の左から加藤聖を経由した展開が少ないのは意外でした。そして結果的には、クリスティアーノが前半沈黙したのもこれが要因だったと思います。

パスソナー・パスネットワーク


長崎の設計(ボール非保持)

  • 長崎は横浜FCのように極端に人をマークせず、ピッチ中央付近でまずブロックを組んでスペースを消すところからスタート。
  • 高い位置からあまりプレッシングを仕掛けないのもあって、横浜のDFは割とボールを持てていたと思います。
  • 一応オプションとして、横浜の中央3枚(岩武、手塚、アンカーの齋藤)に対して2トップと、カイオセザールが上がって同数で捕まえる形も持ってはいる。ただし、このやり方だとじゃあSHも高い位置をとって、横浜の左右のDFを捕まえるのか?というとそこまで徹底できていなくて、あまり横浜はこれをやられても困っていなかった印象でした。


3.試合展開(前半)

ボトルネックを暴くpressing:

  • 2022シーズンのJ2において、長崎も前評判の高いチームで、センターラインにエジガル、カイオセザールのライン、右のクリスティアーノの強力助っ人勢がストロングポイントだと皆さん見ていると思います。
  • ただ、都倉も含めて、長崎のメインキャストはいずれも、「前を向いた時」にそのクオリティが発揮されます。まず前を向くには、前方向にスペースが必要で、加えてその状態でたとえばエジガルがDF裏に走ったタイミングでパスを配給する。クリスティアーノの前にスペースがある状態で、視野を確保しながらコントロールできるように斜め方向からパスを出す、とかそういった仕掛けが必要になります。


  • 長崎が先述のように、サイド迂回で、サイドに選手を集めてボールを運ぼうとする。横浜FCはまずこの時に、長崎の選手をサイドまで捕まえに出ていく。右からの展開が多かったので、SB高橋には長谷川、クリスティアーノにはWB高木、エジガルや都倉がクリスの前に流れてくると、中塩が対応して岩武と中村はボールサイドにスライドしてカバーリング体制を取ります。
  • これをやられると、クリスティアーノは簡単に前を向けず、得意のロングキックをぶちかますスペースを得られない。自分の望む形でボールを受けられないアタッカーは我慢の展開でスタートします。

ヒートマップ - クリスティアーノ



  • そして長谷川がSB高橋に対して寄せることで、(少なくともこの試合に関しては)高橋はそんなにボールを運べないということがバレます。
  • 長谷川は、ニュートラルなポジションではカイオセザールを見る位置に立っていて、サイドの高橋に対しては実はそんなに寄せられるわけではない。ただ高橋は、長谷川が来ると簡単にボールをリリースして、後の処理は都倉やエジガルにおまかせ、という状態にしばしばなります。横浜としてはこうして蹴らせることは織り込み済みで、サイズでは劣っても準備がしっかりできているDFが処理して、長崎のアタッカーに前をむかせずに回収することができていました。


見えない圧力:


  • 前半、私の予想では、横浜の中盤の3人がこの守備のやり方を続けると後半には足が止まる。だから長崎はそれまで我慢して0-0で進めばチャンスがあるかな、と思っていました。
  • そこへ26分、好調を維持する男の左足が火を噴きます。


  • このゴールの直前もそうなのですが、横浜の方が全般に、アバウトなボール…30メートルくらいの放り込みを頭で競って、セカンドボールを拾って二次攻撃、をうまく使っていたと思います。これは、四方田監督が元々そういう選択も多いし、ミシャ札幌もジェイや都倉のパワーでかなり助けられたので(今もドドちゃんとかいるけど)、横浜がそういう選択を取ることが違和感はありません。
  • 言い換えると、横浜はいい意味でボールを捨てることで、長崎にボールを持たせる展開にすることで(SB高橋のところにプレスをかけて)主導権を握ることに成功したと思います。


  • 私の疑問は長崎に対してで、それは①なぜボールを捨てる選択をあまりしなかったのか、②なぜ左サイドから運ばなかったのか、の2点です。
  • ①については、予想としては、松田監督はボールを捨てると、横浜から回収するのが困難だと見ていたからでしょうか。横浜は、長崎のブロックの頭上を通過するロングフィードでビルドアップするので、長崎の得意の、中盤で引っ掛けてカウンターというパターンにハマりにくいタイプではあると思います。
  • ②はおそらく、クリスティアーノを1回関与させることで、そのロングキックで横浜のpressingを回避するとか、そういう期待だったのでしょうか。長崎と横浜の違いの一つに、ロングフィードの使い方もあり、長崎は密集してくる横浜の守備網を打開できるロングフィードがほとんどありませんでした。


  • ともかく、長崎はボール保持からのビルドアップに予想以上にこだわっていて、だとするとサイド一辺倒では、対策を整理してきた横浜相手には難しい。


  • またそれをサイドバックだけの責任にするのも間違っていて、たとえばGKはニュートラルな状態で必ずフリーなので、ボールを持つ気があるならまずGKのところから、相手をギリギリまで引きつけてパスする必要がある。
  • 30分くらいに、長崎のGK富澤から、中盤センターの加藤大に縦パスが初めて通ります。このパスが通って中央に起点ができると、横浜は決め打ちで高橋にスライドするだけでは対処できなくなる(加藤を齋藤功佑や長谷川が捕まえると、SBへのスライドが遅れて長崎のSBは前を向ける)ので、もっとこの形を狙ってもよかったのですが、見たところそれは稀でした。


  • 見たところ、そんなにボールを持つのが得意でもないし必然性もなさそうな長崎が何度もGKからパスを繋いで前進しようとしていたのは、横浜にボールを渡すと不利になる、という見えない圧力のようなものがあったとするなら、開幕戦で一定の完成度のある、ワイドなフットボールを披露した横浜の方が、始まる前から戦略的に優位だったといえるかもしれません。


  • 長崎はどうしてもボールを捨てたくないなら、興梠慎三のようなポストプレーに長ける選手か、往年の中村俊輔?プロフェッショナル・ケイスケホンダ?のようなMFが欲しくなります。ただ外国籍選手を3人同時起用していますし、J2でそうしたクオリティのある選手の確保は容易ではなく、厳しい展開だったと感じます。


4.試合展開(後半)

選択肢は2つ?:

  • チームがうまくいっていないとして、選択肢は、人を変えるか、やり方を変えるか、人もやり方も変えるか、静観するか。
  • 長崎の選択はHTに高橋峻希→奥井、奥田→二見。二見が左SB、加藤が二列目左サイドに入ります。まず人を変える選択でした。
  • 前半の”ボトルネック”を踏まえると、サイドをアップダウンするのが得意な高橋に替えて、奥井の投入は、後者が清水で与えられていた役割を考慮すると納得感があります。


  • ただ、55分くらいから、長崎が徐々に盛り返してきたとするなら、それは奥井の奮闘、もなくはないと思いますが、どっちかというと長崎がアバウトな放り込みを解禁するとか、カイオセザールを前に出す形でプレッシングを仕掛けるとか、松田監督としてはリスク覚悟のやり方に変えた、ギャンブル性の高めな選択の結果だったように思えます。
  • 放り込み自体に対しては横浜FCもそこそこ対処できていたのは前半から変わらず。どっちかというと、長崎にとってポジティブに見えたのは、ビルドアップの役割からクリスティアーノやカイオセザールが解放され、攻撃の際に本来ピッチ上のいたいエリアにポジショニングしやすくなったことでしょうか。クリスティアーノのこの試合、唯一にして極めて殺傷能力の高いシュートが70分に炸裂します(GKブローダーセンが左手1本でセーブ)が70分に飛び出しますが、これもややアバウトな展開が、左サイド起点で行われたので、クリスが中央に絞る余地が生じたところからでした。


  • 素人目にはこうしたカオス展開の方がエラーが起こりやすく、得点の期待値は高まりそうな気もしますが、両監督としてはコントロール不能になる事態は避けたいのでしょう。長崎はまたサイドからのクロスボール主体の攻撃を繰り返し、前半よりはゴールに近い位置まで進出できた都倉が突っ込んで行きますが、ブローダーセンの牙城を崩すことはできず、横浜が逃げ切りました。


5.雑感

  • 全裸で雑に殴り合っていたJ1のどこかのゲームよりも、互いに狙い、ゲームプランが整理され、よっぽど戦術的に見応えがある好ゲームでした。
  • 2試合を見た感じでは、横浜FCは走りそうな予感がしてきました。うまく言えないのですが、「程よく未完成」というか、「程よくアバウト」に見え、長崎のような完成度が高いチームと比較すると、これぐらい粗さなのかバッファがあるチームの方が意外と対策しづらい、というのが私の持論です。
  • 「程よく」がなくなって単にアバウトなチームに成り下がらないよう、マネジメントがうまくいくか?という観点もありますが、それが問題になるとしてもまだしばらく後ではないかと予想します。