前半41分、秋田は群馬のビルドアップのミスからボールを奪うと、高瀬優孝の恩返しクロスから青木翔太が恩返し弾を決める。
群馬は果敢な選手交代やパワープレーで秋田のゴールを何度も脅かしたものの無得点。連勝は3でストップした。
群馬はビルドアップの失敗を改善する必要がうまれた。
ところで、失敗に対する対策は2つある。
1つは、フォールトトレランス(耐障害性)。失敗があることを前提に、失敗しても安全性を維持する考え方。
つまり、ビルドアップを失敗しても失点につながらないようにすること。
もう1つは、フォールトアボイダンス(障害回避)。絶対に失敗しないようにして、安全性を維持する考え方。
つまり、ビルドアップを失敗しないように改善することだ。
サッカーは足でボールを扱うため、ミスも多いスポーツ。
なので、フォールトトレランス(ミスしても失点しない)が求められることとなる。
本記事では『ボールロストした位置がもう10m敵陣側だったら失点の確率は低かった』という視点から、群馬が前進できなかった理由についてデータとともに分析していく。
目次
・封じられたビルドアップ(9節の岩手戦と比較)
・秋田の加藤潤也対策
・加藤-山根-山中の距離感
封じられたビルドアップ(9節の岩手戦と比較)
秋田はボールを持たないチーム。
群馬は支配率60%を記録したが、自陣深くでのパス回しが目立った。
同じく60%近い支配率を記録した岩手戦(9節)と比較すると、違いが一目瞭然だ。
左:11節秋田戦 右:9節岩手戦
秋田戦は岩手戦に比べるとパス回しが1列ほど低くなっている。
CBの畑尾城和がセンターラインを越えてビルドアップする回数も少なかった。
これらのデータから、
・群馬は効果的に前進できなかったこと
・その結果、失点シーンのように低い位置でのパス回しが多くなったこと
がわかる。
では、どうして群馬のビルドアップは封じられ、フォールトトレランスは機能不全に陥ったのか。
秋田の加藤潤也対策に触れていく。
秋田の加藤潤也対策
群馬のビルドアップの特徴は、左肩上がりであること。
左WB天笠が高さを取り、左シャドーの加藤が自由に動くため、相手は混乱しやすい。
参考:神セーブと334型ビルドアップと18人サッカー【2022 J2第9節 岩手 0-1 群馬 レビュー】 | SPORTERIA
秋田は右SH三上が加藤を徹底的にマークすることで(15分ごろ~)、群馬のビルドアップの出口を封じた。
マークを嫌った加藤が高い位置を取ると、三上はそれについていってDFラインに加わることもあった。
加藤が大きく横に動いた際は、三上から稲葉へと円滑にマークが受け渡された。
秋田らしい徹底的な守備が群馬の前進を阻み、得点につながったといえる。
右SHの三上とボランチの稲葉。加藤を徹底マークした。
左を封じられた群馬は主に以下の対抗策に出る
①右サイドのスペースを使う(奥村の投入)
②左SB山中がドリブルして前進
③左サイドのドリブル突破を試みる(山根の投入)
対抗策①について、右サイドを使おうとしても、秋田のスライドが速く前進につながらない場面が目立った。
素早くサイドチェンジをすることが今後の課題といえる。
対抗策②について、山中がドリブルで前進することで、チャンスになった場面が2,3度あった。
ただしSB(攻撃時にはCB)のロストは失点に直結する。
山中の推進力をいつ・どんな場面で使うか、チームで整理することが求められている。
対抗策③については、次項で紹介する。
加藤-山根-山中の距離感の改善に期待
来節以降の大きな課題としては、加藤-山根-山中の距離感の改善があげられるだろう。
怪我から復帰し、約30分の出場を果たした山根。
得意のドリブルで左サイドを切り裂き、パスやクロスでチャンスを演出した。
ただ、気になったのは、左サイドの選手の距離感だ。
山根が離脱している間に、左SHに天笠・右SBに山中が定着。
ビルドアップの出口としての役割は、山根→加藤へと変化していた。
参考:山根永遠のリベンジ【2022 J2第1節 群馬 1-0 山形 レビュー】 | SPORTERIA
山根投入後、加藤は高い位置を取ったが、試合から消えてしまった印象を受けた。
山根と山中の間でもパスミスが起こるなど、距離感の改善が必要なようだ。
加藤、山根、山中は3者とも推進力に定評のある選手。
距離感が改善することで、ザスパはさらに安定したチームになるだろう。
以上、本記事では、ザスパのビルドアップが封じられたこと、それによってフォールトトレランスが機能不全に陥り、失点につながった可能性を示した。
次はミッドウィークの大宮戦。少しでもビルドアップを改善し、ミスしても失点につながらないようなチームになることを期待したい。
コメント(1)
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SPORTERIAスタッフ
2022/4/26 14:27
縦封じ+速い横スライドで堅い守備組織を構築する相手に対して、どう"ズレ"を作るかが伸びしろになりそうですね。
スピードなのかテンポなのか(もちろん強烈な個のパワー、というのもありますが)、この試合を踏まえてどんな次なる一手を打ってくるのか楽しみですね💡
個人的には、それがプランA→プランBなのかプランA→プランA´なのかも注目しています👀